歓迎する市場の風がこのまま吹き続けますように。

先の週末の間に行われた日銀総裁の交代劇。

前々から決まっていた話とはいえ、ワンパターンな”緩和”に固執し続けた末に、最後まで思い描いたような結果を出せなかった前総裁。
最後の最後に物価だけは想定を超えて急上昇し”帳尻を合わせた”形にはなったが、物価が上がったら上がったで世の中は騒々しくなり、政府の余分な出費を増やした末に、毀誉褒貶入り混じる評価を背に、中央銀行トップの座を離れることになった。

自分もかつて何度かあの無茶苦茶な「バズーカ」の恩恵に預かった身だから、意地悪なメディアに乗じてこれまでの10年の業績を全否定するようなことはさすがにしないが、既に様々なところから悲鳴が聞こえてきているこのタイミングで去ることができたのは、不幸中の幸いだったというべきかもしれない。

そんな中、就任前から、学識者出身とは思えないくらい慎重かつ巧みな言動でメディアをかわしておられるように見えるのが後任の植田和男新総裁で、本音では「歪んだ緩和はさっさと解消したい」と思っていても不思議ではないのに、正式な就任後も”焦らず騒がず”のスタンスを醸し出すことでバランスを保っておられることは容易に見て取れる。

そして、その結果、週明け開いてから今日にいたるまで、市場はずっと上げ基調。

途中、あのバフェット氏が「日本買い」を宣言するという幸運があったことを差し引いても、市場は新総裁を大いに歓迎している、というのが、客観的に見た今の状況だと思われる。

幸か不幸か、この世界が揺らぐ激動の中で、5年後の世界がどうなっているかなんて誰にも予測はできないし、政治、経済から金融の世界まで、途中で何が起きるか全く想像もできない状況だけに、新総裁が腕を振るう瞬間は山ほど訪れることだろう。

それらを全て乗り切った形で、新総裁がこの就任時の期待感と同じ熱量で見送られることになるのか、それとも前総裁以上に激しい雨風の中、任期を終えることになるのか・・・。

世の中どんなに暗くても、市場が生きていればまだ救われる人々は(自分も含め)多いだけに、このまま良い方向に風が吹き続けることを願って、新総裁にひそやかなエールを送ることにしたい。

突き抜けた才能。

早いものであっという間に季節はクラシック第一弾、桜花賞

土曜日まで自分が気にしていたのは武兄弟の動向で、何といっても兄・武豊騎手は前週の大阪杯、ジャックドールで逃げ切って見事にGⅠ最年長勝利記録を更新したばかり。

そんな今も昔も当代一流の騎手が、弟の厩舎の馬、しかも超レアなディープインパクトのラストクロップに乗って再びGⅠに挑むとなれば注目しない方がおかしい。

シンザン記念から直行、というローテーションは王道からは全く外れているとはいえ、5年前のアーモンドアイの記憶は未だ生々しく残る。
そして何よりも、そのシンザン記念で後方から一気の脚で差し切ったライトクオンタムという3歳牝馬のパフォーマンス自体に注目すべきところは多々あった。

だが、この日曜日は、昼前のレースからどうにもこうにも的中が遠かった。

土曜日、中穴がいくつかヒットして収支が跳ねて気を良くしたのが運の尽き。オッズにつられて”いい線”を狙ったはずの馬券はことごとく外れ、貯金を食いつぶした上に特別戦に入ってもマイナスは膨らむばかり・・・。

そんな状況でメインレースが近づいてきたとき、自分は原点に還ろう、と決めた。

本番に挑むルートがパターン化していて、ステップレースの優劣も明確にデータに現れているのが桜花賞、というレースである。

3着内入線馬の大半を占めるのはチューリップ賞上位組。さらに阪神JFから直行してきた馬の連対率は50%にも達する。

要は、阪神ジュヴェナイルフィリーズ組とチューリップ賞上位組を組み合わせて買っておけば大体当たる~というのがこのレースなのだ。

後がなくなりつつあった自分に取れる選択肢は他になかった。

人気を被っていることは知りつつも、阪神JFで圧倒的なパフォーマンスを見せたリバティアイランドを本線に。そして、チューリップ賞を逃げ切りで勝ったモズメイメイを典型的な「来ないチューリップ賞馬」と決めてかかったうえで、キタサンブラックの血に可能性を感じた同レース2着のコナコーストと、3着・ペリファーニアを組み合わせる。

これで外れていたら自分に絶望する・・・そんな感じの勝負だったのだけれど・・・

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世間の水を怖れるなかれ。

前にも書いたが、「春」と聞いて思い出すのはいつだって↓である。

この曲の儚いトーン同様、決して風のぬくもりほど心が温まらないのは、四半世紀経った今でも「入社式」前後の陰鬱な気分がどこかにこびり付いているからかもしれない。

思えば、昨年までの3年間、世の新入社員たちは実に幸福だった。

入社式はリモート。その後の集合研修もリモート。

対面だと必ず周りに一人や二人いて煽ってくる上昇志向の強い輩や、何かとアピールしたがる輩も、ZOOMやTeamsの画面越しならパワーは落ちる(はず)。

本格的な仕事に突入してからの環境のギャップに戸惑う人は少なからずいたとは思うけど、最初に味わう”嫌な感じ”を経験しなくて済むだけマシだったんじゃないか、と自分なんかは思ったものだった。

だが、今年はおそらく多くの会社で「コロナ前」に戻る。

大人にとっては貴重な週末、土曜日であるにもかかわらず、堂々と「入社式」をやって報道陣にまでアピールしてしまうブラックな会社に入ってしまった新入社員の方々には”ご愁傷様”という言葉をかけるほかないのだが、本当に大変なのはここからの数日間。

自分の頃のような極端な経験をする人は、今時そう多くはないだろうが、仕事の、社会の厳しさをこれでもか、というくらいに強調し、大して年代も離れていないのに”先輩マウンティング”を取ろうとする人々と、それに迎合する一部の同期たち、という構図は、時代が下ってもどこかしらかには残っていて、善良な人々をイラつかせる。

特に、学生時代の多くの間、自分の環境で、比較的”緩やかな時間”を過ごしていた方々にとっては、ここからの時間が無駄に気を遣い、エネルギーを消耗する時間になったとしても全く不思議はない。

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2023年3月のまとめ

恐ろしい勢いで過ぎていく日々。気が付けば1年も4分の1を終えようとしていて、外の空気もすっかり春めいている。

なんだかんだ言っても、今の状況は、忙しさがそれなりに報われるようになっていて、今月の月次は過去最高を更新。
滅茶苦茶大きな仕事をしたわけでもないのに、気が付けば口座に入ってくる金額がサラリーマン時代のボーナスの何回分かに匹敵するような数字に膨らんでいるのを見て一番戸惑っているのは自分自身だったりもする。

まぁ、こんな生活がいつまでも続くとは思っていないのだけれど、もはや失うものなど何もない世代だから行けるところまで行くだけ・・・。

ということで、ブログの方はやっとこさの更新で何とかページビュー10,500弱を確保、ユニークユーザー4,000強、セッション7,000弱。

「落ち着いたらやりたいこと」のリストの一番上の方に入っている”本当に書きたいエントリー”のアップができないまま、1ヶ月、2か月、いや、ひどいものになるともう半年近く経ってしまったりしている今日この頃だが、それでもいつか、自由に語れる日が来ることを信じて、前に進む。

<ユーザー別市区町村(3月)>
1.→ 大阪市 310
2.→ 千代田区 258
3.→ 港区 187
4.→ 横浜市 109
5.↑ 新宿区 92
6.↑ 渋谷区 87
7.↓ 名古屋市 75
8.圏外世田谷区 71
9.↑ 中央区 64
10.↓ 神戸市 59

上位には変動ないものの、「コロナ前」の序列が着実に戻りつつあるなぁ、というのが率直な感想。

続いて検索ランキング。

<検索アナリティクス(3月分) 合計クリック数 1,599回>
1.↑ 企業法務戦士 82
2.↓ 知恵を出さないやつは助けないぞ 68
3.↑ 学研のおばちゃん 現在 47
4.↑ 東急グループ 序列 29
5.↓ シャルマントサック 裁判 24
6.↓ 学研のおばちゃん 22
7.圏外企業法務 ブログ 14
8.圏外シャルマントサック事件 11
9.圏外アドマイヤムーン 売却 事件 10
10.↓ crフィーバー 大ヤマト事件 10

なんというか、代わり映えしないな・・・といったところで最近インパクトのある記事を書いていないので仕方ないのだけど、また春になって新しく訪れてくれる人が増えてくれると良いな、と。

なお、今月のTwitter最多インプレッション記事は↓だった(インプレッション数4,083)。
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

”皮切り”の3月総会が終わって、いよいよ本格的な「ポスト・コロナ」の総会シーズン到来。

そんな”平時”も、異常時の対応も、全部合わせてここから数か月、ただ駆け抜けるだけ、である。

「神風」を常に吹く風にするために

月初めから豪快にかっ飛ばして、朝にささやかな楽しみを与えてくれた、唐池恒二JR九州相談役の『私の履歴書』。

いよいよ終盤を迎え、何が出てくるか、と思ったところで登場したのが、観光政策に対する痛烈な「提言」だった。

「政府は「ビジットジャパン」キャンペーンなどに取り組んできたが、訪日外国人は年間500万人から800万人あたりで停滞していた。たまたまというべきか、アベノミクスが始まった13年にこの数は伸び始め15年には1970万人まで急伸した。」
当時の観光庁は海外でのPRなど、それまでの政策が実を結んだとしていた。果たしてそうだろうか。人数増は経済成長するアジア諸国へのビザ発給要件の緩和・免除が主な要因だったのではないか。」(日本経済新聞2023年3月29日付朝刊・第48面、強調筆者、以下同じ。)

インバウンド需要が「神風」のように吹き始めた頃、順調に伸びていく訪日外国人客数を背景に、政府主導のキャンペーンや「クールジャパン」等の助成施策の成果を強調したがる人々は多かった。

だが、当時の肌感覚としても、実際のところは上記の指摘のとおりだったと思うし、政府がむやみやたらに旗を振れば振るほど失敗事例が積み重なっていく、という暗黒史はCOVID-19がこの国に襲来するずっと前から始まっていた。

そして、唐池氏の話は2015年秋から2016年春にかけて官邸主導で行われた「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」でのエピソードに続いていく。

「官邸の「構想会議」は2000万人ラインを突破する頃に開かれた。私は海外の実例を挙げ、「1度は行ってみたい(=1度行けば十分な)」国と、歴史と文化の厚みがあり2度、3度と行ってみたくなる国と、日本はどちらなのかと問いかけた。観光の重要な役割は経済や文化を支えることだ。外国から年間8000万人台の旅行者を受け入れる観光王国フランスでは9割がリピーター。日本のリピーター率は6割にとどまる。
訪日外国人の総数ばかりを追い求めず、リピーターの数やリピート率を重要視すべきだと首相らに伝えたつもりでいた。この会議の狙いが、訪日外国人の目標人数の大幅な引き上げにあるらしいと進行の端々から感じられたからだ。新規の客を求めて宣伝に力を入れるより、また訪れたいと思わせる観光資源を整える方が大事だと思われた。」
「構想会議の討議期間も間もなく終わる16年3月、事務局の観光庁から連絡のメールが来た。「各委員は訪日外国人の目標数を提言してもらいたい」。そうら来ましたよと思い、すぐ返信した。「総数を目標に入れるのもいいが、リピーターの数と率の方がもっと重要ではないか」。そのうえで人数目標は「20年に3000万人」が現実的で妥当な線ではないかと提案した。」
「しかし招集された会議の冒頭、報道陣を前にした安倍首相は「20年に4000万人、30年に6000万人」という受け入れ目標人数を宣言してしまう。
(同上)

右肩上がりを続ける訪日外国人客数を前に政府の目標はエスカレートし、インバウンド需要目当ての過剰投資に走る企業もやたら増えるようになった。

客観的に見れば明らかに供給過剰なのに次々と発表されるホテルの新築・増設計画に免税店の市中拡大、さらに「民泊」まで大風呂敷を広げてブームに乗っかろうとしていた。

これに続いて唐池氏が批判する「クルーズ船」もしかり。かつての”団体慰安旅行”を彷彿させるような”マス営業”に持続可能性があるとは到底思えないのに、そこに飛びついた人々はあの頃確かにいた。それに輪をかけて全国各地でカジノ構想が沸き上がった時期でもある。そういえば「多くの観客が世界中から訪れる五輪」なんていう幻のイベントも迫っていた。

だが、そういった浮ついた世界観は、「新型コロナ禍」が全て吹き飛ばしてくれた。

この国を襲った最初の一波が「クルーズ船」だったのは皮肉としか言いようがないが、”神風バブル”を吹き飛ばしてフラットな世界に戻した、という点では、「3年」という時間もあながち悪いものではなかった気がする*1

*1:新型コロナに対しては一家言ある唐池氏だけに、明日の朝刊ではまた豪快な節回しを拝めそうな気もするが・・・。

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”2匹目のどじょう”は逃しても、逃がさなかった大魚。

もはやすっかり3月末の風物詩となったドバイワールドカップデー。

先月のサウジアラビアでサウジカップ優勝をはじめとする華々しい活躍を見せた馬が多かったこともあり、今年も例年以上に豪華な布陣で乗り込んでいくこととなったのが、日本調教馬陣営で、実際、そこで出した結果も実に見事なものだった。

最初のゴドルフィンマイルこそ馬券圏内に食い込めなかったものの、続くUAEダービーでデルマソトガケ以下、上位4頭を独占する派手な勝ちっぷり。

短距離のゴールデンシャヒーンでは、米国血統のスピード馬たちの後塵を拝したものの、ドバイターフでは国内GⅠ未勝利のダノンベルーガが豪快に追い込んで2着。さらにドバイシーマクラシックではイクイノックスが後続に影をも踏ませぬ逃げでそのままゴールに飛び込んで優勝。

そして最後のドバイWCでは、サウジカップからの「連勝」を狙うパンサラッサやジャパンカップ勝馬のヴェラアズールらに焦点があてられる中、”リアル砂馬”たちが猛然と反撃した。

ウシュバテソーロが後方から強襲して堂々の優勝。テーオーケインズ、クラウンプライドといった馬たちも馬券にこそ絡めなかったものの、しっかり存在感を示す。

他の逃げ馬に競りかけられてハイペースの削り合いに巻き込まれた結果、「2匹目のどじょう」を逃すことになったパンサラッサ陣営には気の毒というほかないが、潰れた先行勢を呑み込んだのもまた日本勢だった、ということの爽快感は何物にも代えがたいものがあった。

かつて日本のガチのダート馬で世界と戦うなんて無理、という声も普通に出ていた世界で、とうとう世界の頂点に立ってしまったこの凄さをどう形容すればよいのか自分も答えを持ち合わせてはいないのだが、サウジカップに続いて日本馬関係者の”ダート適性”を十分に証明したこのレースが、ここから先の心理的な壁を打ち破る効果を発揮してくれる、と自分は信じているし、何よりもサウジカップに続いて日本の競馬学校育ちの騎手が頂点に立ったということをここで改めて強調しておきたい。

いつものように、”裏番組”となってしまった国内GⅠがどうしても霞んでしまった週末ではあるが、ここからまた踏み出される一歩に最大限の期待を込めて、温かく見守っていきたいと思っているところである。

「日本勢圧勝」で気付く”いないもの”の存在感

4年ぶりに日本国内で行われたフィギュアスケートの世界選手権。

一時に比べればかなり熱は冷めてしまっているとはいえ、開幕早々から日本勢の華々しいニュースを目にすれば結果が気にならないはずがない。

ペアの 三浦璃来・木原龍一組を皮切りに、女子、男子とショートプログラムで次々に報じられる好成績。

そして、フリーに入っても、三浦・木原組が遂に115年の歴史上初の日本勢優勝を、これまた日本勢史上初のシーズングランドスラムで飾ったかと思えば、女子シングルでは坂本花織選手が日本勢史上初の連覇。その興奮も冷めやらぬまま迎えた競技最終日には、宇野昌磨選手が日本勢男子初の連覇、という、いくら地元とはいえちょっと出来すぎな結果となった。

浮かれすぎないように・・・ということで言うならば、今回の日本勢の好成績の背景には、「冬季五輪の翌シーズン」であるにもかかわらず五輪に出場したエース級の選手たちがこぞって第一線での競技活動を継続した、という”特殊事情”があることは否定できない。

男子に関しては、羽生結弦選手こそ競技者としての一線を退いたものの、五輪2大会連続メダリスト&前年世界覇者の宇野選手が満身創痍の中でも現役を続行。

前々回五輪直後の世界選手権から北京五輪まで、無敵を誇ったネイサン・チェン選手が休養に入り、まだまだ伸び盛りだった鍵山優真選手もケガで小休止となれば、実績的には圧倒的に上位、という状況だった。

またペアと女子シングルに関していえば、「ロシア勢の不在」が圧倒的な追い風になったことも否定はできない。

ペアに関しては、北京五輪で2位~4位を占めていたロシア勢が姿を消し、金メダルと5位入賞だった中国ペアもいなくなったから、三浦・木原組より上位で残ったのは五輪6位の米国・アレクサ・クニエリム、ブランドン・フレイジャー組だけで、昨年の世界選手権で自分たちの前に立ちはだかったこのペアとの序列をひっくり返せば、頂点が見える状況だったと言えるし、現にそうなった。

また女子シングルは、今回の世界選手権のフリーの演技を久々にじっくり見たのだが、とにかくロシア勢がいない、というのが新鮮で新鮮で・・・

浅田真央選手が制した2014年・ソチ五輪直後のさいたまスーパーアリーナでの世界選手権以来、五輪前年までの6大会でロシア勢の優勝は5回*1、しかもうち3回は表彰台に2名ロシア選手が立ち、五輪前年の2021年に至っては表彰台をシェルバコワ選手以下、ロシア選手が独占する、という状況だった。

五輪を制した選手が翌シーズンから休養に入ってもすぐに下の世代が次々と台頭し、よりグレードアップした演技で優勝争いに絡む、というのが、この10年くらい女子フィギュア界を席巻してきたロシア勢の凄みだったから、ドーピング問題もウクライナ戦争もなければ、今年の世界選手権の主役も間違いなくロシア勢だっただろう。

だが現実にifはなく、今年の世界選手権は派手な高難度ジャンプ合戦とは無縁の、表現力重視のプログラムで競い合う展開となった末に、スケールの大きい演技で魅せた坂本選手に凱歌が上がったのである。

もちろん、フィギュアスケートは、単に「実績」だけでスコアを稼げるスポーツではないし、ロシア勢以外にも世界中で常に新しい世代の選手たちが登場する新陳代謝の激しい競技でもあるから、今回頂点に立った日本選手たちが、それにふさわしい努力を積み重ねてきたことは疑いないことだと思う。

ただ、いたらいたで憎らしいが、いないと物足りなさを感じるのが、ロシア勢の華たるゆえん。

今回、坂本選手が優勝を決めたフリーの演技を滑り切った時、何とも言い難い安堵感を抱いたのは自分だけではなかったと思うが、鉄壁のロシア勢の一角を突き崩した北京五輪での奇跡のスケーティングと比べるとインパクトに欠けるところは確かにあって、強い好敵手がいてこそだな・・・という思いも完全に拭うことはできなかった。

1年後、順当に進めば三浦・木原組が連覇を、宇野選手と坂本選手が「3連覇」を賭けて挑む大会にロシア勢は戻ってくるのかどうか。

仮に戻ってこなかったとしても、ペアでは伝統国の巻き返しが当然予想されるところだし、男子には若干18歳の4回転アクセルジャンパー、イリア・マリニン選手がいる。そして女子は躍進著しい韓国勢が、キム・ヨナ時代からさらに数段グレードアップして日本勢を猛追してくることだろう。

そんな状況の中で、「北京五輪組」が築いた城を守り切れるのか・・・。

幸いにも、今の日本には、ジュニア世界選手権を男女制覇できるだけの層の厚さもあるだけに、たとえ今の第一人者たちが躓いたとしても、それを乗り越えてさらに・・・という展開はまだまだ十分に期待できるのだが、一歩歯車が狂いだすと取り戻すのがなかなか難しいのもこの世界だったりするわけで*2、今はちょっとした弾みで悪い方向に向かわないことをただ願うばかりである。

*1:唯一の例外は、平昌五輪後、メドベージェワ選手が欠場し、ザギトワ選手もまさかの失敗でメダルを逃した2018年(カナダのオズモンド選手が優勝)だけである。

*2:コンスタントに世界選手権で表彰台に立ってきた男子(今年で9大会連続、誰かしらは表彰台に立っている)はともかく、女子は浅田真央選手、鈴木明子選手が現役第一線を退いた後、苦戦するシーズンも多かった。

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