「一太郎」特許侵害事件判決評釈

NBLの11月1日号に、
日比谷パーク法律事務所の上山弁護士が、
「「一太郎」特許侵害事件判決(知財高判平成17年9月30日)の
短い評釈を掲載されている*1


ここでは、

①「その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」の文言からの素直な解釈と、結論の妥当性との間に乖離がある(条文の見直しが必要)。
②方法の発明である請求項3について、プログラムである控訴人製品が間接侵害の対象たる「物」にあたらない、とした解釈には疑問がある。

という指摘がなされているが、
上山先生は別の機会でも同趣旨の発言をされていたし、
その際には、「間接侵害」の成否について、
本判決の解釈は、立法者意思からだいぶ離れているのではないか、
ということもあわせて指摘されていた。


ある特定の権利者集団の便宜に沿えるような法改正を意図したつもりが、
現実に施行してみたら、
かえって当該集団にとってのリスクを増幅させる結果となって、
適用される段階になって慌てて調整する、という例は良く見られる。
ソフトウェア特許の間接侵害をめぐる問題も、
この類の問題の一つといえる。


松下電器側が上告を断念しているため、
本件に関して言えば、
上記の論点について最高裁での判断が示されることはない。


だが、ソフトウェア特許に対して逆風が吹き始めている今、
上山先生の思いに反して、
「間接侵害」が認められる範囲も、自ずから狭まる方向へ
向かっていくように思われる。


プロ・パテント政策の典型例と思われてきた規定について、
謙抑的な解釈がなされるというのは矛盾のようではあるが、
これまで権利者サイドに傾いていた天秤*2を戻すには、
これくらいの発想がちょうど良いのかもしれない。

*1:上山浩「「一太郎」等の特許侵害事件の知財高裁大合議部判決」NBL820号7頁

*2:この点は、人によって評価が分かれるところであろうが・・・。

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