逐条解説不正競争防止法[平成16・17年改正版]

最近散財グセが付いているようで、目当ての本がなかったにもかかわらず、またしても法律関係書籍を大量購入。


しかも運悪く、システム障害(?)でクレジットカードが使えなかったせいで、キャッシュも大量流出・・・。


自覚はしているのだが、少なくとも本に関しては、浪費グセは直らない・・・。


さて、今日買った本の一冊が、改正不競法の逐条解説。

逐条解説 不正競争防止法〈平成16・17年改正版〉

逐条解説 不正競争防止法〈平成16・17年改正版〉

平成15年度版では、改訂前の「営業秘密管理指針」が収められていたのに、今回の版には収められていない。
改めて刊行するつもりでもあるのだろうか・・・?
(それとも入稿の関係か?)


ただ、「関係資料」として、前回同様、産構審小委員会の報告書*1が入っているのは有難い*2
これまで読み流していたところも含めて、一度、きちんと読んでみることにしたい。


もっとも、こうやって、法改正をフォローしていても、いざ会社の施策に反映させようと思うと、なかなかうまく進まない。
現実の仕事の便宜を考えると、管理指針で示唆されている「ミニマムの水準」を満たすことさえ容易ではないのだ。


そもそも、本来、「秘密管理性」要件(特に「アクセス制限の存在」)は、ここまで厳格に解されるべきものなのだろうか?


「ミニマムの水準」の根拠となっている裁判例の中には、極めて筋の悪い事案も多く*3、結論の妥当性からいって、原告を敗訴させるのが当然と思われるものが多い。
そして、そのような事案で原告の主張を“一蹴”するためには、時に難しい事実認定を迫られる「不正取得行為」や「信義則違反」の判断によるより、「秘密管理性」要件を厳格に解して、「原告が不正使用を主張する情報は「営業秘密」ではない!」と言ったほうが、すっきりする。


これまでの裁判例で、「秘密管理性要件」が厳格に解されている背景には、上記のような事情があるように思われる。


いわゆる「信義則違反」類型ならともかく、産業スパイが秘密情報目当てでセキュリティを破って侵入してきたような極めて悪質な事例で、たまたま当該情報が鍵のかかっていない机の引き出しに入っていたからといって、2条1項4号該当性を否定するのは不合理であろう*4


なので、“筋の悪い”裁判例の集積をもって、「ミニマムな水準」とするのはミスリードなのではないかと、個人的には疑問を感じている。


もっとも、一法務担当者の個人的見解が、行政指針より尊重されることは稀である以上、知恵を絞るほかないのではあるが。


なお、NBLの11月15日号に、経産省住田室長の「営業秘密管理指針」に関するコメントが載っているが*5、この点について、特に真新しい記述はなかった。


残念・・・。

*1:不正競争防止法の見直しの方向性について」(平成17年2月)

*2:ネット上でも入手できるものではあるが、やはり一冊の本にまとまっている方が、保管するには便利である(CDでシングル盤を全曲持っているのに、わざわざベスト盤を買いなおすのと同じ感覚である)。もっとも、そんな理由でいちいち本を買い漁っているから、「無駄遣い」になるわけだが・・・。

*3:競業によって商圏を脅かされたことへの腹いせとして、不競法2条1項4号、7号を「道具」として、請求を提起したように見受けられるものも多い。

*4:田村教授は、同様の例を挙げ、「秘密管理という要件は相対的な概念である」と説かれている(田村善之『不正競争法概説〔第2版〕』329頁(有斐閣、2003年))。飯村敏明編『座談会・不正競争防止法をめぐる実務的課題と理論』(青林書院、2005年)170頁・吉田和彦弁護士発言も参照。

*5:住田孝之「営業秘密管理指針の改訂について」NBL821号13頁(2005年)

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