昨年夏頃、「特許紛争もここまで来たか!」と話題になった、
日本航空インターナショナル(JALI)と全日空(ANA)との間の、
法人向けオンラインサービスをめぐる特許侵害訴訟。
日経新聞の14日付朝刊(15面)によると、
JALI側が「特許侵害訴訟を放棄」するという形で決着したようだ。
(http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051213AT1D1309F13122005.html)
これまで“特許の世界”とは一線を画していると思われていた
サービス事業者が、約100億円の損害賠償請求と、
相手方システムの使用差止を求める、という大胆な手を打ってきたこと、
そして、これがわが国を代表する二大航空会社間の紛争であったことから、
当時はかなり注目を集めたものだが、
(http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20040727/147800/)
上の記事にもあるように、
本件訴訟はなかなか進まないライセンス交渉に業を煮やしたJAL側が、
“伝家の宝刀”を我慢しきれずに抜いてしまったもの、
という感が強い。
たまたま見つけた個人ブログ(『ぐ〜たら夫婦の旅日記』)の当時の記事に、
JAL側の特許の構成要件とイ号物件を
分かりやすく対比したものがあり、参考になるが、
(http://gu-tara.jp/archives/000123.html)
これを見ると、そもそもANAのシステムがどのようなものか、ということ以前に、
JAL側の特許の進歩性に疑義を抱かざるをえない。
本件は、提訴後の経過が全くといっていいほど報道されていなかったので、
提訴後、請求放棄に至るまでどのような経過をたどったのかは明らかではないが、
特許庁が「JALIの特許範囲を狭める判断」をした、
という記述から推測するに、
ANA側が無効審判請求
↓
JAL側がやむなく訂正請求
↓
無効審判は不成立となったが、訂正によって権利範囲が著しく狭まる
ということだったのではないかと思う。
あるいは、上記ブログでも紹介されている分割出願特許(第3400447号)の
無効審判が成立したか、のどちらかであろう。
※これに関し、特許庁での口頭審理のルポも別ブログで紹介されている。
(http://hatakama.cocolog-nifty.com/strategicit/2005/09/post_3ecb.html)
JAL側の訴訟提起が、どのような社内判断に基づいてなされたものなのか、
部外者である我々は、あらぬ憶測をするしかないのだが、
“審査が甘かった”時代のビジネスモデル特許で、
侵害訴訟を維持するのが極めて困難だということは、
現在では、知財業界はともかく、法務業界ではもはや常識となっている。
“革命的”とまで言われたビジネスモデル特許の多くは、
ロイヤリティ確保のための“脅し”として使うことはできても、
抜いた瞬間に刃こぼれを起こしかねない代物なのである。
それでもあえて“やってしまった”あたりに、
他のところでも露呈している、
かの会社のリスク管理能力の“甘さ”を感じざるをえない*1。
ま、明日はわが身なのかもしれないが・・・。