今の仕事についてから、
社内で研修を受け持つ機会が増えた。
研修といっても、対象はさまざまで、
営業店舗の担当者向けのときもあれば(お題は「良いチラシの作り方」(笑))、
開発担当者向けのときもあるし(これは特許とソフトウェア著作権中心)、
広報担当者向けに著作権を侵害しないプレス資料の作り方、を
レクチャーしたこともある。
そういえば、新入社員向けの“教養講座”なんていうのもあった。
依頼してくる側は「ネタは使いまわしでいいから〜」なんていうが、
それぞれ求められているものが違うのだから、
そう簡単にはいかない。
自分としては、やはり法務担当者向けに話をする方が気分的には楽なのだが、
法務の仕事をしているとはいっても、
子会社、孫会社のレベルになると、
実質的に総務だの庶務だのの仕事と兼務している“名目的法務担当者”も
多いので、法律用語を駆使して話をするわけにもいかない。
なので、数十分の間、居眠りせずに聞きたくなるような、
実務的に“美味しい”ネタをいかに噛み砕いて話すか、に細心の注意を払うことになる。
「消尽」だとか「商標機能論」なるワードを使わずに、
フレッドペリー事件をどうやって解説するか、とか、
アルゼ侵害訴訟の“大逆転劇”(いわゆるダブルトラックの問題)を
聞き手の頭を混乱させないようにどうやって説明するか、
(しかもそれを「実務」とリンクさせながら・・・)
ということを考えていくと、思いのほか難しいことに気づく。
自分のスタンスは、
自分が受け持つ以上は、世の中の本に書いてあるようなありきたりな話はしない、
という一点にあるから、
裁判例をあちこちから拾いながら、内容を組み立てていくことになるわけだが*1、
あまり中身をつめすぎると消化不良(&時間切れ)になるし、
かといって、端折りすぎると、全体の体系が見えないまま、
ただの四方山話で終わってしまう恐れが大となる*2。
かつて、学生時代に大学の先生方の講義を聞きながら、
「なんか話が整理できてないな〜」とか
「また時間切れじゃん、使えねーな」なんて、
無責任な感想を抱いたりもしたものだが、
一回完結の、かつさほど要求されるレベルも高くない“講義”で
これだけ苦労するのだから、
うるさい学生達を前に、教壇に立たれ、自ら組み立てた法体系に基づいて、
(しかも)半年、一年継続して講義をされていた先生方のご苦労は、
如何ばかりだったろうか、と思う。
ちなみに、今自分が最大の課題にしているのは、
「PowerPoint」の使い方である。
以前、某大学の公開講座で、来日されたLessig教授の講演を聴いたのだが、
そのときの教授のパワーポイントの使い方は、
まさに「エンターテイメント」と呼ぶにふさわしいもので、
非常に感銘を受けたものだった*3。
元々法学の世界では、学会発表等でもビジュアル系ソフトが使われることは少ないし、
講義やゼミ発表もペーパーベースで行われることが多い。
実務者向け講義などに足を運ぶようになってからは、
比較的パワーポイントを活用した講義を目にする機会も増えてはいるが、
「説明を補足するツール」という機能を超えたところで
このソフトを使いこなしている講義には、残念ながらあまりお目にかかったことがない。
最近では、
自分もネタ系ビジュアルを相当程度取り込むようにはしているのであるが、
一流のパワーポイント使いの先生方には到底及ばないのは
言うまでもない。
やはりここは、中学受験向け進学塾の先生方にでも、
知恵をお借りした方が良いのかもしれない・・・。
ちなみに、次回作では是非とも「のまネコ」ネタを使ってみたいのだが、
著作権に触れずに、「のまネコ」を登場させるのは・・・
これまた難題である。