『法務インサイド』でも・・・

去年の「地域ブランド」導入時に比べると、何となく世の関心が薄いという印象があった「小売等役務商標制度」だが、ついに、日経新聞の月曜日コラム、「法務インサイド」で取り上げられた*1


コラムでは「悲願がかなった」と喜びの声を挙げる日本百貨店協会佐藤信彦・業務推進部マネージャーの声を皮切りに、類似商標対策*2や管理コスト削減、といった新制度のメリットがいくつか挙げられているが、それと同時に、

①「他者が使いそうな商標を押さえ、転売などを狙う出願者の暗躍」
②「小売商標を排他的に使いたいと考える企業の競合」

といったデメリットも指摘されており、比較的バランスのとれた内容ということができるだろう。


もっとも、このコラムにおける指摘の多くは、特許庁の「公式見解」に近いもので、現実に新制度のユーザー側が懸念している内容が全て盛り込まれているというわけではない。


例えば、メリットとして挙げられている「商標管理コスト削減への期待」は、小売業者の通常の商標の使用が「小売商標」としての使用と「商品商標」としての使用の双方にあたりうる、とする特許庁の現在の解釈の前ではかなり怪しくなってきていることや、逆にデメリットへの対策として紹介されている、

「出願手法からブローカーの疑いが残る出願者には、小売事業を行っていることを店の写真やカタログなどで証明するよう求め、事前の排除に努める」

という手法が、純粋な「ブローカー」には程遠い一般事業者まで対象になってしまう可能性をはらむ手法であること等については、このコラムの中では言及されていない。


他にも、デメリット②に関して指摘されている、「「日清食品」と「日清製油」の「ニッシン」商標の奪い合い」については、「小売等役務商標制度」の導入如何にかかわらず、商品商標の枠内でも生じうることであるし、*3、過去サービスマーク制度導入時に行われた「特例出願」において、実際に協議が行われたケースは(出願全体の比率の中で)決して多くはなかった*4という点など、細かい指摘をしていけばキリがないのだが、やはり、今回の新制度導入で一番問題になっている点*5についてコラムで言及があまりなされていないことに対しては、やや物足りない気分が残る。


もちろん、今回の新しい制度の存在を広く世間に知らしめていただくこと自体、現在の状況を鑑みると貴重な意義があることだから、それだけで十分意義のあるコラムなのは確かであるのだが・・・。


なお、個人的には、

「特例期間の競合の結果が出るのは約1年後」

という特許庁の強気のコメントにいたく感心した次第であった(笑)*6

*1:2007年4月9日付朝刊・第18面。

*2:コラムでは、「AMPM」商標をめぐってダイエーがコンビニのエーエム・ピーエムジャパンを提訴した事件を例に、従来の「小売サービスを商品商標で守る煩雑な仕組み」の問題点を指摘する。

*3:逆に、取扱い商品が異なる小売等役務を双方が出願すれば、“競合”の問題が生じることなく解決することもありうる。

*4:ほとんどの出願については使用実績を提出することで「重複登録」が認められ、現在に至っている。

*5:個人的には、①「小売商標」と「商品商標」の区別がいまだに曖昧であること、と②現在予告されている商標3条1項柱書審査の基準が厳格に過ぎるように思われること、の2点に尽きると思っている。

*6:特例期間中にどの程度の出願がなされるかによるが、3条1項柱書審査と合わせて、ともすれば審査官に膨大な負担を強いることになる、新制度に基づく審査運用の下、果たしてそれだけの短期間で「結果」を出せるのか、疑問なしとはしない。