究極の“KY”判決

この日、東京高裁で逆転有罪判決が下された、葛飾区マンションビラ配布事件。

「政党ビラを配るため東京都葛飾区のマンションに立ち入ったとして住居侵入罪に問われ、一審で無罪判決を受けた僧侶、荒川庸生被告(60)の控訴審判決が11日、東京高裁であった。池田修裁判長は「憲法表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、他人の財産権を不当に害することは許されない」として東京地裁の無罪判決を破棄、罰金5万円(求刑罰金10万円)の逆転有罪判決を言い渡した。」(日本経済新聞2007年12月12日付朝刊・第42面)

正直いえば、地裁で無罪判決が出たときの左側関係者の騒ぎようが尋常でなかったせいもあって、「やれやれ・・・」という思いも少しはあるのだが、やはり、冷静に見れば見るほど、結論としては明らかに不当だろう、という思いは隠せない。


上記日経の記事の中では、憲法学者がこぞって判決に反対の立場を表明している。


例えば、奥平康弘東大名誉教授は、

「立川反戦ビラ事件は自衛隊宿舎だったが、今回は一般住宅のため、法の適用範囲が広がるのではないかと危惧する。判決ではポストへの投函を禁じたマンション管理組合の決議を金科玉条として、個別の住民の情報を受け取る権利性が抜け落ちている。」

として、恣意的な法律の運用の問題点を危惧されているし、愛敬浩二名古屋大教授は、

「広告などの商業ビラ配布が放置されているのが現状なのに、政党ビラだけを排除するのは整合性が取れない。民主主義社会では多様な意見が流通することが非常に大事で、ビラが必要なければ住民が捨てればよく、コミュニケーション手段として相手にかける負担は小さい。・・・刑事罰を適用すれば表現の自由が過度に抑制されてしまう」

とこれまた憂いの念を表明されている。


表現の自由」がどうこう、といった振りかぶった話をするつもりはないし、本件はそういった次元で語られるべき話でもないと思うのであるが、世間一般の常識から言って、

マンションのポストにビラを配布する行為(ポスティング行為)

がいちいち刑事罰の対象になってしまったら、とてもじゃないがやってられない(というか、ピザ屋のバイトの多くはしょっ引かれてしまう)というのは、子供でも分かることだろう。


マンションの住民が、ビラ配布に対して強硬に反対していたのであれば、そういう話は民事上の対処に委ねれば済む話であって、公権力がわざわざしゃしゃり出るような話でもあるまい。


こんな微罪事件をあえて事件化した警察、検察サイドの意図が、「特定の政党」のビラ配布を止めることにあるのは明らかなのに、そういった問題点に正面から向き合うことなく、形式的に法を適用した裁判所の何と愚かなことか。



本件は既に上告されたとのこと。


上告審判決で、常識的な判断を求めるための唯一の途があるとすれば、選挙前に自●党だとか、●明党だとかのビラがポストに配布されたマンション住民が、直ちに告訴状を持って地元の警察、ないし地検に特攻することだと思う。


当然、各政党の活動員は本判決の規範に従えば、「有罪」ということになるはずで、それを起訴猶予にするようなことがあったら、それこそ大問題である。





・・・いずれにせよ、筆者としては、最高裁の叡智に期待したい。

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