今年の大学入試センター試験で、現役志願者数が78.8%を占めた、というニュースを見て、世の中変わったなぁ・・・と思わずため息をついてしまう。
元々、大学入試全般の中では現役生の受験比率が高い「センター試験」とはいえ、昨今の少子化やそれに比して一向に減らない大学入学定員を考えると*1、一浪、二浪も珍しくなかった、第二次ベビーブーマー末期世代の“大学入試”に対する感覚など、もはや時代遅れになってしまっていることは、想像に難くない。
自分が大学に入った頃は、同じクラスの半分以上は浪人生で、しかも、高校の1期、2期上の先輩方が4〜5人中心にいたこともあって、非常に肩身が狭かった。
中高通じて、比較的フラットな環境で育ったとはいえ、
「もう同級生なんだから敬語なんか使うなよ」
と言われて、次の日からタメ口が聞けるような教育は受けてなかったわけで。
「教養時代の語学の成績が酷いのは、それで面倒になって教室に行かなくなったからなんだよね」、と、いうと半ば冗談のように受け止められてしまうけど、それはレッキとした事実の一つで当時は胃がいたくなるような思いをしたものである*2。
だが、そうはいっても、学生時代に仕事をしている中で、年数置いて大学に入ってきたヤツはやっぱり違うな・・・と思い知らされる経験をしたことは度々あった。
4年間、ずっと自分にコンプレックスを与えていたのは、「東京の名門私立校出身の汚れなき経歴の秀才」連中ではなく*3、「地方名門校出身の秀才」と「何となく余裕を感じさせる元・浪人生」だったわけで、それを両方兼ね備えているとなると、もう太刀打ちできないような気分にさせられたものだ。
かのT大でさえ、東京出身の現役生が多数を占めている現在、かつて自分が幾度となく味わった「永遠に追いつけないんじゃないか」という感覚を、これから大学に行く人たちは味わえなくなるのかと思うと、ちょっと羨ましく、そしてちょっと気の毒になる。
なお、いくら全体の受験者数が減っても、上位校を目指す人間の数やレベルは変わらない、というのはよく言われていることだから、それを考えれば、駒場の青臭いキャンパスから、「なーに、君らそんなに生き急いでるの?」的な雰囲気を漂わせた“大人たち”の姿が消えることはないのかもしれないし、そんな“大人”になるために、一年間臥薪嘗胆の心持ちで戦う青年達の姿が御茶ノ水や代々木の界隈から消えることもないのかもしれないが、少なくとも、「東大を目指す北海道出身の美人浪人生に恋する、日東駒専狙いの二浪生」なんていう人は、もはや絶滅危惧種なのだろうと思う・・・。

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「冬物語」だけじゃなくて、「めぞん一刻」しかり、「あすなろ白書」しかり、“浪人生”が一種の“ファッション”というかステータス(?)だった時代は確かにあったわけで、筆者自身、日々“一素浪人”になりたい衝動に駆られるのは、そんな時代が、ちょうど多感な時期(苦笑)に重なってしまったことと無関係ではないような気がしている*4。