先日はハリーポッターの最終巻発売でちょっと盛り上がった感のあった書店業界だが、1日の朝刊に並んだ2件の記事を見ると、そんな話題もある種の“仇花”に過ぎないのか・・・とため息を付きたくなる。
「大日本印刷は31日、書籍販売大手の丸善が8月20日に実施する約43億円の第三者割当増資を引き受けると発表した。これにより大日本印刷の丸善株保有比率(議決権ベース)は40.78%から51.28%に上昇し、丸善を子会社とする。すでに大日本は丸善の筆頭株主だが、書籍販売不振で丸善の業績は低迷しており、増資引き受けで教育向け事業を強化する。」(日本経済新聞2008年8月1日付朝刊・第10面)
「「青山ブックセンター」「流氷書房」などの書店を運営する洋販ブックサービス(東京・港)は31日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は53億9500万円。グループ会社で洋書取次の日本洋書販売(同)が同日、販売不振から約66億円の負債を抱えて自己破産を同地裁に申請。日本洋書販売の連帯保証人だった洋販ブックサービスも再生法適用に踏み切った。」(日本経済新聞2008年8月1日付朝刊・第10面)
1つ目のニュースの方は、大企業傘下で建て直しを図る動きとして、まだ前向きに評価できるが、2つ目の方は深刻だ。
なぜなら、記事によれば、「青山ブックセンター」は、「2004年に民事再生法を申請、日本洋書販売傘下で再スタートしていた」書店であり、実質的にはこの短期間の間に二度目の民事再生を受けたに等しい状況といえるからである・・・。
幸いなことに、青山ブックセンターはブックオフコーポレーションが支援に向けて動くようで、書店営業自体も継続するそうであるが、この先「ブックオフ」ともどもどうなるかは分からない。
「丸善」のような大書店*1でさえも、異業種の大企業の傘下に入らないと生き残れない現実。現代は未曾有の書店大不況時代に突入しているといえるだろう・・・。
正直、インターネット経由で本が簡単に買えてしまう時代に、あるいは、かつて書籍媒体を通じて得ていた情報をインターネット上で簡単に見つけられる時代に、「書店」の存在意義がどの程度あるのか疑問だ、という声が上がっても不思議ではない。
「書を捨てよ。ネットを見よう。」(寺山修司の名言をちょっと捻り。)
というキーフレーズがぴったりはまってしまいそうな時代だけに、“さもありなん”と、さしたる感慨もなく、↑のニュースを読み流す人が大勢いたとしても、それに文句を言うことはできないだろう。
だが、学習参考書を探しに本屋にいって、たまたま新刊書コーナーで目に留まった本を思わず衝動買いしてしまう・・・などという“平積みレイアウトの妙”は、インターネットショッピングではちょっと味わえない代物だ。
個人的には、新書・古書の垣根を越えて、ドンキホーテみたく、“玉石混交宝探し本探し”みたいなコンセプトの書店が増えれば、もう少し業界も活性化するんじゃないか、と思ったりするのであるが・・・*2。
今世紀の終わりに「書店」という文化が果たして残っているのか。
それを決めるのは“神の見えざる手”に操られた消費者の動向如何なのだろうが、ここはいっそそんな合理的な発想を度外視して、せめて“遺跡”としてでも22世紀に1軒くらいは残しておいてほしい・・・と思う次第である。