飯村敏明裁判長を擁する知財高裁第3部の凄さは、これまで再三にわたりご紹介してきたところであるが、夏休み明け早々、再び強烈な存在感を見せ付けている。
他の裁判所に先駆けていち早く8月26日から判決を連発したのも印象的なのだが、何よりもその中身がすごい。
アップされている拒絶不服審判不成立審決の取消訴訟3件全てで、特許庁の審決を取り消す判断を下しているのだ。
査定系審判の取消訴訟といえば、これまで“請求認容率が2割に満たない”という状況であることが知られており、出願人にとっては極めて狭き門だと思われていた。
だが、これまでも「付言」の中で、特許庁に対する厳しい姿勢を示してきた飯村コートのこと。特許庁の“専門性”なるものに恐れおののくようなマインドは存在しないようである(笑)。
ちなみに、取り消された3件のうちの1件は、「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書」という発明(特願2003-154827号)に関するものなのであるが、ここでは、
「本願発明が自然法則を利用したものと言えるかどうか」
という特許法の根源的な問題について、興味深い解釈が示されている*1。
今年の間にあと何回この合議体の判決を取り上げることができるのか。ウォッチャーの楽しみは尽きないのである。
*1:知財高判平成20年8月26日、H20(行ケ)第10001号、第3部・飯村敏明裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080827101011.pdf