2009年度の法科大学院の入試実施状況が公表されている。
「文部科学省は5日、2009年度の法科大学院(国公私立計74校)の入試実施状況をまとめた。志願者総数は前年度比24.9%減の2万9714人で、04年度の設立以降初めて3万人を割り込んだ。志願倍率も前年度の6.8倍から低下し、過去最低となる5.2倍。8割の大学で、入学者が入学定員を下回る定員割れとなった。」(日本経済新聞2009年6月6日付朝刊・第38面)
日経紙は、いつもの調子で、“あたかも制度の危機”が如く煽っているが、「5.2倍」という倍率が決して楽なものだとは思わないし、志願者が減ったとは言っても3万人弱、という人数は決して少なくない*1。
それに、現行司法試験史上最高だった平成15年の出願者数が50,054人であるのに対し、これに対し、昨年の現行司法試験の出願者数が21,972人だから、これと上の2009年度の志願者数を足すと、ちょうど同じくらいの数字になる*2。
「新たな法曹志望者層の開拓」という点では(数字を見る限りでは)十分な成果が上がっているとは言い難いのかもしれないが、記事で騒がれるほど、「人気がなくなった」わけでもなさそうである。
もっとも、2010年度の志願者数がどの程度になるのか、という点については、少し注意してみる必要がある。
というのも、これまでのパターンで行くなら、景気の急激な悪化で就職戦線に大きな変調が出た今年(2010年度入試)は、志望者が大幅に増えても不思議ではないはずで、逆に、ここでこれ以上志願者を減らすようだと、当面受験者全体のパイが増える機会は訪れそうにないからである。
そう考えると、各法科大学院が「定員削減」という「改革」をこのタイミングで打ち出すのが、はたして良いことだったのかどうか・・・
先日のエントリーでも述べたとおり、中長期的な視点で考えるなら、小手先の策で合格率を上げることよりも、「法律家」の裾野を広げることを考えた方が、大学にとっても、そこで学ぶ学生にとっても、メリットが大きかったように思う。
今からでも遅くはない。
逆風の中、あえて異なる道を行く・・・そんな取り組みをする学校が、1つくらいあっても良いと自分は思っている。