これぞ円熟の境地。

今年で第36回を迎えたジャパンカップ
「36」といえば“サブロー”、とか何とか言ってキタサンブラックに飛びつくのはど素人だけだ!と、思いっきり逆らってみたのが運の尽きだった。

長く続いた東京開催、内側の芝はかなり傷んでいるように見えたし、実際、土曜日から、多頭数の芝中長距離レースでは6枠より外側の方が来る、という傾向が強かったから、内枠の馬よりも外枠のリアルスティールシュヴァルグランの方が魅力的に感じた、というのは決して間違った予想ではなかったと思う。

だが、1枠1番、最内からスタートしたキタサンブラックと、それを操った武豊騎手の技は全ての思惑をひっくり返してしまった。

ポンと出て、後続に影を踏ませず、かといって無理に引き離すこともなく、淡々と刻まれたラップ。
そして1000m61秒7、とG1レースでは考えられないような“逃げ馬ペース”に持ちこんだキタサンブラックは、最後の長い直線でも全くバテを感じさせることなく、上がり34秒台の脚を繰り出してまんまと逃げきり勝ちを飾る。後続に付けた差は実に2.5馬身。

自分は長年、武豊という騎手は“溜めた逃げ”が苦手なのだろうと勝手に思っていた。
騎手として全盛期だった頃も、逃げて勝ったレースは、馬の行く気に任せてぶっちぎったサイレンススズカのレースくらいしか印象に残っておらず、むしろ「溜めて逃げようとしたが最後にバテる」という展開になったレースばかりがやたら記憶に残っている。
リーチザクラウンしかり、最近ではエイシンヒカリもしかり・・・。

しかし、逃げ切りが一番難しい、と言われる大舞台で、そんな先入観は見事なまでに裏切られた。

入りのコーナーからプレッシャーをかけにきたリアルスティールワンアンドオンリーの「圧力」に全く動じることなく走り切ったのは、成長を遂げた馬自身の能力によるところも大きいとは思うのだけれど、今日に限っては、円熟の境地に達した鞍上に称賛を送るしかない・・・そんな舞台だったように思う。

次戦、有馬記念までこのコンビで制したとき、さらに広い世界に向かうのか等々、気になる話もいろいろあるのだけれど、今はまず喝采
そんな気分である。

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