「刺客」のいない寂しさ〜ブックガイド2017

Business Law Journal誌の年末目玉企画、「法務のためのブックガイド2017」を特集に掲げるBLJの2017年2月号が今年も刊行された。

Business Law Journal(ビジネスロージャーナル) 2017年 02 月号 [雑誌]

Business Law Journal(ビジネスロージャーナル) 2017年 02 月号 [雑誌]

例年なら大手を振って絶賛購入を勧めるところなのだが、今年はちょっと様相が異なる。
というのも、昨年、一昨年と、バランスのとれた見事な鑑識眼と風刺の効いたコメントで、この企画の「要」となる活躍をされていたronnor氏の書評が掲載されていないからだ。

ronnor氏は、昨年のこの企画以降、四半期に一度法律書を総ざらいレビューする、ということで、既に定期連載の執筆陣に名前を連ねておられるから、編集部としても、あえて連載のスケジュールからずれる今回の特集に原稿を載せる必要性を感じなかったのかもしれないが、BLJの読者は定期購読者だけではない

毎年、この企画だけを楽しみにBLJ誌を購入している読者もいることを考えると、これまでの連載のダイジェスト版でもよいからronnor氏の評価をここに織り交ぜてほしかった、というのが率直な感想である。

なお、各記事で取り上げられている推薦図書について言うと、今年は「企業法務関係者が興味を持ちそうな法改正等の動き」が少なかったこともあってか全体的に盛り上がりに欠けていることは否めないだろう*1

また、数年前には実務向け法律書の世界で、「革命」とも言えるような斬新な視点や構成の書籍が世に出されて、強烈なインパクトを与えてくれたこともあったのだが、そういうコンセプトの書籍が最近では珍しくなくなってきたこともあり、そうなると“中身”の方にどうしてもシビアな目が向いてしまう。

ということで、法律雑誌やセミナー等でタイムリーな情報を入手することが以前よりも容易になってきている現状では、“帯に短し、襷に長し”ということになってしまいがちな「書籍」をプッシュするのはどうしても難しい状況ではあるのだが、もはやネタが尽きた、と思われていた邦画界で今年200億の大ヒット作が生まれたのと同じように、良質のコンテンツを提供し続けていれば、ちょっとしたしたきっかけで大爆発することもある・・・そう信じて、法律書の出版関係者の皆様にはもう少し踏ん張っていただきたいな、と思う次第である。

*1:これはあくまでネタの問題で、改正個人情報保護法の施行や、債権法改正の成立を控えた来年以降は、もう少し企画的にも内容的にも充実した書籍が出てくるはずだが。

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