ようやく、の終焉。

よりによってこの年末に・・・と誰もが思った、少し早めのクリスマスプレゼントというにはあまりに唐突な政策転換だった。

「日銀は19~20日金融政策決定会合大規模緩和を修正する方針を決めた。長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げた。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げを意味する。アベノミクスの象徴だった異次元緩和は10年目で転換点に差し掛かった。」(日本経済新聞2022年12月21日付朝刊・第1面、強調筆者、以下同じ)

まもなく就任から10年を迎えようとしている黒田東彦日銀総裁が、どれだけ「機能してない」「失敗だ」と言われ続けても頑なに正当性を主張して譲らなかった「大規模緩和」策。

新型コロナ禍からウクライナ戦争を経た混乱の中で、物価上昇率が2%を優に上回る状況になっても、いつまでも金利を下限に張り付けているこの国が世界中のヘッジファンドの標的になって大幅な円安を招いても、それでも微動だに動かないかのごとき「信念」が声高に発せられていたから、「後任総裁人事の話題が出る頃までは大幅な政策変更はないだろう」と自分もすっかり油断してしまっていた。

年末続々と姿を見せたIPO銘柄の中から、本物の「グロース」が見込めそうな銘柄をいくつか見繕い、じわじわと株価回復基調にあった某銀行株を一部売却して購入資金に充てたのは19日のこと。

20日の午後、日銀の発表と同時に株価は暴落。特にグロース系の銘柄は散々たる有様。そんな中で、唯一逆行高だったのは銀行、保険等の金融銘柄のみ・・・。

「キルクール」が定番な自分の投資の歴史の中でも、ここまで見事にハシゴがぶっ壊れたことがあっただろうか・・・と嘆くしかない最悪の展開だった。


政策転換そのものには1ミリも反対する余地はない。

平時に効果を発揮できず危機時においてはもはや有害でしかなかった施策に任期いっぱい固執することなく、終わりが見えてきたこのタイミングで自ら軌道修正を図ったことで、現総裁に対するこの先の評価にも多少の手心が加えられることになるのかもしれない。

ただ、このタイミングはあまりに遅く、悪かった。

今は、しばらく続いた為替市場の変調ゆえ世の中が「極端な円安」を受け入れ始めた矢先であり、物価上昇(とそれに伴う売上、利益の嵩増し)に対応して続々と各社が季節外れの「賃上げ」に踏み切る流れができていたタイミングでもあった。

おそらく、今年の夏ごろにこの政策転換ができていれば、物価上昇はここまで激しいペースになる前に収まっていただろうし、各企業が「インフレ手当」を支給するところまでは到底行っていなかったことだろう。いつまでも「変更」の判断をしない日銀のもたつきのおかげで世の中は大きく変わろうとしていた。それが・・・。

自分のように、株式は5年、10年寝かせてナンボ、という「長い目」での投資をしている者であれば、一時期の株価の上下動にそこまで目くじらを立てる必要はないし、為替レートの急変動もそこまで気になる話ではないのだが、企業ともなるとそう単純な話ではないわけで、特に海外に拠点を持つ企業の場合、為替レートがこれだけ短期間のうちに大きく変動してしまうと、収入見通しの数字も大きく書き直さないといけなくなる可能性がある。

そうでなくてもここ数年間で足腰が弱っていた会社が多いから、今回の政策転換がもたらす衝撃にどこまでの会社が耐えられるか・・・なんてことも心配なところではあるが、それでもここで踏み切ったことが後々「英断」と評価されるのかそれともその逆か。今は祈るような気持ちで眺めている。

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