リーニエンシーの落とし穴

これまで、朝日新聞が一貫して「受注調整を認める方針」と報じる一方で*1、日経紙は「(受注調整を認めず)自主申告をしない方針を固めた」と報じていて*2、独禁業界の関心を一手に集めていた清水建設が、遂に動いた、ようである。

リニア中央新幹線の建設工事を巡る談合事件で、清水建設独占禁止法の課徴金減免(リーニエンシー)制度に基づき、22日の期限までに違反を公正取引委員会に自主申告したとみられることが分かった。」(日本経済新聞2018年1月24日付朝刊・第2面)

日経紙のみならず、他紙も一斉に報じているところからすると、相当堅いソースからの情報なのだろう、ということで、構図は「2対2」となった。

本件では、昨年末から後追い報道がそんなに絶えることなく続いていて、いつもなら命令が出るまではなかなか浮かび上がってこないような事実まで(真偽はともかく)ポロポロと漏れてきているとはいえ、今世に知られている情報だけでどちらの選択が正しいのか、ということを見極めるのはほぼ不可能である。

上記記事にも出てくる、

「担当者同士の会合や情報交換はしたが受注調整はしていない」

という主張とか、

「担当者が社内で工事への参加や不参加を決められる立場になかった」

といった主張は、過去の審決例でバッサリと否定されたこともあって*3、あまり筋の良い主張ではないのでは?という声も耳にするが、事情によっては「情報交換」と「受注調整」の結びつきを否定できる理屈も当然出てくるわけで、ましてや、「結果」が全てキレイにリンクしているわけではない、ということになってくると、「拘束合意をしたのは4社のうちの一部だけ」という事実認定もあり得、結果的に“認め損”ということになる可能性も否定はできない。

ということで、古くて新しい「課徴金減免制度」の本質的な問題に改めて気づかされた、というのが今の状況。

個人的には、「『クロ』の確証はないが、株主代表訴訟を恐れてリーニエンシー」というのは、会社の経営判断としてあるべき姿ではないし、その結果、真相の解明からかえって遠ざかるようなことになれば、制度自体の妥当性に疑いを抱かざるを得なくなるから*4、「違法事実の不存在」を信じる者は、中途半端に当局に迎合するのではなく、徹底して戦うことを通じて真相を抉り出してほしいものだ、と思わずにはいられない。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20180118/1516293697参照。

*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20180117/1516207474参照。

*3:シャープの液晶カルテル事件など。http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/jul/13073101.files/13073101.pdf

*4:これも昔から言われていたことであるが、「減免」の効果が大きければ大きいほど、「虚偽自白」「共犯者巻き込み」のリスクも増すわけで、司法取引とも共通する問題は常にはらんでいる制度だと思っている。