指揮官の力。

本当は週末に書こうと思っていたのに、慌ただしさにかまけてグダグダしている間に数日経ってしまったネタ。

土曜日に名将・エディ・ジョーンズヘッドコーチ率いるイングランド代表がオールブラックスを完膚なきまでに叩きのめした姿を見て、そして、その数時間前に、典型的なエレベーターチームだったコンサドーレ札幌が、これまた名将・ミハイロ・ペトロヴィッチ監督に率いられ、ルヴァン杯の決勝で川崎フロンターレを延長戦あと一歩のところまで追いつめた姿を見て思ったこと。

競技は異なるし、代表監督とクラブチームの監督、とでは置かれている環境も全く異なるとは思うのだけれど、それでも共通するのは、指揮官の力は偉大だ、ということ。

あの日本代表をW杯本大会であわやベスト8入りするくらいのところまで持っていった名将が、本場イングランドの元々ガタイの良い選手たちを徹底的に鍛えればどうなるか、ということは、彼が4年前のW杯直後に今の就任したときからおおよそ想像は付いていたことではあるのだが、それでも、地元開催であえなく予選プール敗退を喫したチームが、4年でここまで躍進を遂げ、しかも試合前のハカから、試合中のパス回しまで、とにかく相手の良いところを潰して勝つ、という衝撃的な歴史を残せるチームになるとまでは想像できなかった。

ペトロヴィッチ監督にしても、残留争いの常連だったチームを昨シーズンリーグ上位にまで引き上げ、今年も優勝争いに絡みつつ、リーグカップも決勝戦まで連れていく、という魔法のような力を発揮している。

いずれのエピソードについても、自分は単なるメディアを通じた傍観者に過ぎず、実際に現場で何が起きているかを知る由もない。

ただ、スケールは比べ物にならないくらい小さくても、一度、二度、現実の社会で「指揮官」としてチームを率いた経験がある身としては、こういうエピソードに接するたびに、同じ立場で結果を出した人と出せなかった人の間で、何がどう違ったのか、ということは、すごく気になるものである。

選手を”選ぶ”力の差なのか、それともフィールドでの戦術の差なのか、あるいは、見えないところでのトレーニングなり、メンタルコントロールなりの差なのか、はたまた純粋な情熱、熱量の違いなのか・・・。

現実の世の中はもっと世知辛くて、「選ぶ」権限すら与えられず、使える戦術の選択肢も少なく、さらには、ベンチで采配に専念する、ということすらできない現場指揮官がほとんどだったりもするので、たとえ話でも”恵まれた指揮官”を引き合いに出されると閉口する向きは多いと思うのだけれど*1、結果を出さなければ評価されない、というシビアな世界で生き残っていることへの畏敬の念は当然あるわけで・・・。

*1:自分もサッカーの日本代表が勝ったからと言って、あれだけ豪華なメンバーを集められる代表監督を引き合いに出して管理職向けの訓示にされることほど嫌なことはなかった。しかも、引き合いに出されるのが、備えているものの奥深さが感じられるオシムハリルホジッチではなく、ジーコザッケローニ、さらには西野朗監督だったりすると、おいおいと思うところはあった。

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強すぎる女傑と、またしても、の残念な結末。

ようやく東京競馬の開催も正常化して、天候「晴れ」の中行われた天皇賞・秋

凱旋門賞組はまだ合流していないし、宝塚記念馬もオーストラリアに遠征中(そして見事に戴冠!)という中でのレースではあったのだけれど、いない馬が全部そろっても絶対にこの馬にだけは勝てなかっただろう、というレースぶりで、アーモンドアイが圧勝した。

スローペースで先行馬たちがごちゃつく中、最内をくぐりぬけてきたルメール騎手の技量と度胸が勝利に貢献したのは言うまでもないことだが、あのペースでトーセンジョーダンレコードタイムに0.1秒差*1。捲土重来を期してレースに臨み、同じような位置取りから抜け出したダノンプレミアムすら、3馬身ちぎられてしまうのだから、やはり日本馬同士の戦いでは頭一つ二つ抜けている。

安田記念で不利を受けることなく圧勝していたら、そして、そのまま凱旋門賞に遠征していたらどうなっていたか、というところはやっぱり気になってしまうのだが、その、たられば、は封印して、彼女が日本のターフで走ってくれていることに、とにかく感謝するほかない。

で、馬券的には、単勝1.6倍、複勝1.1倍のこの馬を追いかけても全くうまみがない、ということで、今回も穴複勝、2‐3着ワイド狙いで攻めたのだが、またしても「大事な一頭」が抜けて残念な結果となってしまった。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

前走(毎日王冠)は、連覇こそ逃したものの、彼女にしては会心に近いレース。でも今回は叩き2戦目、更に距離も伸びてるからなぁ…と見送ってしまったところで、見事なまでに繰り返された歴史。

戸崎圭太騎手が乗るアエロリットの逃げは決して面白くはないが、直線に入っても決してへばらないしぶとさがある*2

春の痛みを秋になって忘れてしまっていたわけではないのだけれど、結果的には再び彼女の粘りが、自分が一推しだったユーキャンスマイルの追い込みをクビ差で阻んだ、ということもあり、またやってしまった悲しみを抱えつつ、残り2カ月、挽回できるチャンスを狙ってやっていくしかない、と決意を新たにした(?)ところである。

*1:トーセンジョーダンが1分56秒1のレコードタイムを叩き出したときは、シルポートが最初の1000mを56秒5でかっ飛ばし、先行馬が軒並み総崩れ、という超ハイペースのレースだったが(久々に見ごたえのある勝負。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照)、今回は最初の1000mのペースは59秒0である。

*2:スローペースとはいえ、彼女に付いていった馬は、対抗馬・サートゥルナーリアにしても、伏兵スティッフェリオにしても、最後はズルズルと沈んでおり、決して単純な前残りのレースではなかった。

これが新しい時代の権利制限規定。

ここのところ、プライベートで法律のこと考えたくない、というくらい、どっぷり条文だの、条文になる前のあれこれだのに漬かっていて、結果、このブログも、”気分転換専用”みたいになっているのだけど、やっぱりこの話題だけは触れないわけにはいかないだろう・・・ということで、文化庁が令和元年10月24日付で公表した「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方について」をご紹介しておきたい。

掲載ページは、http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/1422075.html
PDFへのリンクは、http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/pdf/r1406693_17.pdf

そういうのが出るらしい、という話は聞いていたので、プレスリリースで華々しく出すのかと思っていたら、「政策について」-「著作権」という地味なページにひっそりと掲載されることになったこの「考え方」だが、これまで様々なところで語られていた解釈より、さらに一歩二歩、踏み込んでいるところもあるように思われ、平成30年改正著作権法の権利制限規定の解釈を検討する上で、今後しばらくは有益な資料として使われるだろうな、という中身になっている。

特に確認しておきたいのは、前半のQ&Aの中で、一般的な条文解釈を越えて、具体的に想定される事例ごとに各条文の「あてはめ」を示したくだり。

法第30条の4:問11~問17
法第47条の5:問35~問43

このうち、30条の4(非享受利用)に関してどこまで権利制限の対象となるか、という点に関しては、おおよそ言われていたようなレベルの解釈かな、という感じで、むしろ、

「製品の機能・性能の確認のための試験に社会通念上必要な範囲を超えて著作物の利用を行うような場合は,利用態様に照らして享受を目的としているとの評価がなされる可能性もあることには留意が必要である。」(12頁、問13の回答、強調筆者、以下同じ。)

といったように、「権利制限の対象とならない可能性」に言及した記述の方が若干目に付く内容となっている。

また、リバースエンジニアリング(問12)に関しても、

「リバース・エンジニアリングと言われるようなプログラムの調査解析目的のプログラムの著作物の利用は,プログラムの実行等によってその機能を享受することに向けられた利用行為ではないと評価できることから,法第30条の4の「著作物に表現された思想又は感情」の「享受」を目的としない利用に該当するものと考えられる。」

という原則を記したうえで、

・プログラムのオブジェクトコードをソースコードに変換するだけでなく,それをまたオブジェクトコードに変換し直す場合
・プログラムの解析を困難にする機能が組み込まれているウィルスプログラムの当該機能部分を除去する場合
・プログラムの解析の訓練・研修のために調査解析を行う場合
・ウイルス等の被害にあったコンピュータ内のOSやプログラム等について,被害当時の状況を保全するために複製し,第三者に調査解析を行わせる場合

といった派生的な具体的を挙げ、さらに、

「仮にプログラムを実行しつつ調査解析する場合や調査解析中の当該プログラムがアセンブリ言語に変換された画面を資料化(紙媒体への印刷,PDF化)する場合でも,そのプログラムの実行や資料化がその機能を享受することに向けられたものではないのであれば,同様に「著作物に表現された思想又は感情」の「享受」を目的としない利用に該当するものと考えられる。」

とユーザー側の”使い勝手”を最大限意識した書きぶりになっていながら、最後の3行で、

「なお,利用規約等でリバース・エンジニアリングを禁止するという規約が付されている場合は,リバース・エンジニアリングを行うことは上記のとおり法第30条の4により著作権侵害とならないと解されるが,規約との関係については注意する必要がある。」(以上11頁)

と、太字部分にちょっと肩透かしを食らうところもあり・・・*1

一方、47条の5(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)に関しては、具体的事例への解説のくだりで、よりユーザー側の便宜を意識した記載になっているように見える。

例えば、

問 42 ユーザーがSNSに書き込んだ内容や閲覧している内容等からユーザーの嗜好を分析し,ユーザーが興味を持つと思われるコンテンツに関する情報を提供するサービスにおいて,当該情報の提供とともに当該コンテンツの一部分を提供する行為は,権利制限の対象となるか。

という問いに対しては、

「当該サービスにおいて結果の提供とともにコンテンツの一部分を利用する行為は,分析結果として提供されるコンテンツがユーザーが興味を持つコンテンツであるか否かを容易に確認することができるようにするためのものであり,通常は,結果の提供に「付随」するものと考えられる。このため,当該サービスにおける結果の提供とともに著作物の一部分を利用する行為については,軽微性など,同条に規定する他の要件を充足する場合には,第47条の5による権利制限の対象となるものと考えられる。」(31頁)

と、何ら「留意」が付されていない書きぶりになっているし、

問 43 ユーザーが自ら歌唱・演奏した音源をプロの歌唱・演奏した音源と比較等して分析し,その結果を提供するサービスにおいて,その結果の提供とともにプロの歌唱・演奏した音源の一部分を提供する行為は,権利制限の対象となるか。

という問いに対する回答も、

「当該サービスにおいて結果の提供とともにプロの歌唱・演奏した音源の一部分を利用する行為は,分析結果に示されるプロの歌唱・演奏した音源との差異を体感して理解できるようにするためのものであり,通常は,結果の提供に「付随」するものと考えられる。このため,当該サービスにおける結果の提供とともにプロの歌唱・演奏した音源の一部分を提供する行為については,軽微性など,同条に規定する他の要件を充足する場合には,法第47条の5による権利制限の対象となるものと考えられる。」(32頁)

と全く同じような書きぶりになっている。

もちろん、上記解説にも記載されているように、47条の5の本文には、

「当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合,その利用に供される部分の量,その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。」

という要件が課されている分、本文がよりスマートな規律になっている30条の4とはちょっと事情が異なる、という背景はある。

でも、いずれも、「ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。」というただし書きが同じように付されているにもかかわらず、片方ではそこに全く触れない、という解説を貫くのはなかなかすごいものだな、と思った次第。


現時点でも既に「写り込み」に関する権利制限規定(30条の2)の条文の見直しが進められているところで*2、平成29年報告書の「三層構造モデル」に基づいた権利制限規定の”リフォーム”は、まだまだ完成形には至っていない、というのが自分の理解ではあるのだけれど、できて当たり前のことを、条文からすっきりと「できる」と説明できる場面がだんだん増えてきた、というのは、やっぱり素晴らしいことだと思う。

そして、「考え方」を掲載したページに記された、「本資料は,実際に行われるサービスの状況や,事例の蓄積の状況等を踏まえつつ定期的に内容を更新していくことを予定しています。」というフレーズにこそ、一連の規定の真の意義が込められていると自分は思っている。

だから、まだこの世に登場していないサービスにどこまで平成30年改正法の規定を広げていけるのか(そしてそれに対応した解説がどこまで書き足されるのか)、期待を込めてこれからも見守っていくことにしたい。

*1:まぁそれでも、著作権者の「主観」(利用規約で定めている内容)が、「ただし書き」該当性判断に参酌されない(「著作権者の利益を不当に害する」と評価されるかどうかは、あくまで利用行為の客観的性質や態様等によって決まる、ということを明記してくれただけでも意味はあると思うけど。

*2:文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会第2回資料参照。http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/r01_02/pdf/r1421572_01.pdf

齢50を超えたレジェンドが教えてくれたもの。

ここ1か月ほどのラグビーブームの中で忘れ去られてしまったイベントは結構多い。

年に一度のビッグイベントにもかかわらず、開催されていることすら認識されているのかどうかわからない「日本シリーズ」の悲劇的な扱いに比べれば、競馬なんてまだまだマシな方だと思っているのだが*1、こちらの方はどちらかと言えば天気に泣かされていて、ここ何週かは、台風で開催日が飛んだり、開催されてもあいにくの雨で馬場が渋ったり・・・。今日は平日の月曜日にもかかわらず、ひっそりと振り返られた前の3連休のレースが行われていた。

で、その音声をラジオで聞きながら思い出していたのが、前日の菊花賞

ラグビーさえなければ「令和初の菊花賞」として、もう少し注目を集めても良かったのかもしれないが、今年に関しては傑出したスターホースがいるわけでもないし、そもそも秋華賞と同様に、春先のクラシックタイトルを獲った馬は一頭も出ていない、という状況だったから、事前の盛り上がりが今一つだったのも仕方ないところはある。

そして、個人的には、「レース前よりもレース後に扱いが大きくなった」というところに、今年の菊花賞のレベルの高さが如実に現れているような気がして、ちょっと嬉しかったりもする。

今年、中央のG1タイトルに見放され続けている川田騎手ともども、最後の一冠に賭けていたはずの優等生ヴェロックス。

同じく三冠皆勤賞組のニシノデイジー、サトノルークス、タガノディアマンテ、メイショウテンゲン、といった馬が挽回を期す一方で、夏競馬から直行の上がり馬ヒシゲッコウやホウオウサーベルが虎視眈々と下克上を狙う。さらに、春を故障で棒に振ったディープインパクト産駒・ワールドプレミアや、無敗でトライアルを制覇した後にダービーを回避したザダル、といった”幻のダービー馬候補”たちも、最後の最後で舞台に立つ。

毎年同じようなドラマが展開されているレースとはいえ、今年は何となく例年以上に「役者」が揃っているように見えたのは自分だけだろうか。

さらに、蓋を開けてみたら、ワールドプレミアが、道中ヴェロックスをちょっと後ろの位置でマークし続ける、という非常に分かりやすい展開となり、結局、直線で大本命ヴェロックスを捕まえて先頭に躍り出たワールドプレミアが、猛追してきたサトノルークスをクビ差しのいで勝つ、というお手本のようなレースで優勝を勝ち取った。

そして、鞍上は、あの武豊騎手。「騎手がうまかった」という絶賛の嵐に、最年長勝利記録を更新するというおまけまで付けたことも、レースの印象をより濃くするものとなった。

レース後、武豊騎手の菊花賞勝利があのディープインパクト以来14年ぶりだった、ということを耳にして、そういえばキズナ菊花賞よりもフランスで父の敵を討つ方を優先したんだったな、とか、キタサンブラックは3歳時までは北村宏司騎手が乗っていたんだったな、とか、いろいろ記憶を紐解いたりもしたのだが、それ以前に、中央で4,000勝以上上げているレジェンドも、今や他のリーディング上位騎手との比較では決して騎乗馬に恵まれているとはいえない*2、という現実がある。

そんな中、馬の力も騎手の技量も最大限引き出される淀の芝3000mの舞台で「まさに武豊」という騎乗が示されたことが、これからの状況に多少なりとも影響を与えられれば、と思ってやまない。

何といっても、「ディープインパクトがこの世を去った年に、こういう形で歴史を作る」といった不思議な引き、運の良さも持っている騎手だけに・・・。

来週以降、例年同様、レベルの高い外国人騎手たちがGⅠの連勝記録を伸ばしていくのを脇目で見つつ、円熟さを増した騎乗で、彼らに一矢でも二矢でも報いてくれれば、というのが今の自分の率直な思いである。

*1:何だかんだ言って毎週やっているし、やっている人間にとってはある種の「日課」のようなものだから、別のイベントのせいで1、2週注目されなくても、コアなファンにとっては何の影響もない。

*2:武豊騎手のGⅠ制覇の記録自体、フェブラリーSキタサンブラックを除けば、2013年(キズナトーセンラー)まで遡らないといけない。

そして、祭りは終わった。

自国開催の国際的な競技会で日本代表チームが健闘する、というのはよくあること。

記憶をたどるなら、1992年のサッカーのアジア杯(日本が初優勝)あたりが、「ホームアドバンテージ」を自分が目の当たりにした最初の機会で、翌年のU-17世界選手権ではベスト8進出。

さらに長野での冬季五輪を挟んで、忘れもしない2002年のサッカーのワールドカップでの歴史的なグループリーグ突破・・・。

そういう文脈で眺めれば、今、まさにこの国で行われているワールドカップで日本代表が勝ち進んでいたことも、決して不思議なことではないのかもしれないけれど、やっぱりその競技が「ラグビー」だった、ということに、自分はどうしても違和感を隠しきれずにいた。

一次リーグ突破どころか、「1勝」を挙げることすら長らく”悲願”とされていた代表チーム。かつてはニュージーランドに145点を奪われて粉砕されたこともある。

一番強い相手と当たる時は、ハナから勝負を捨てて控えメンバー主体で臨み、狙いを定めた相手に必勝を期すも思惑は常に空回り。

エディ・ジョーンズ監督の下での強化策が実を結び、前回のW杯で南アフリカから大金星を挙げ、余勢をかって一次リーグで3勝を挙げたのは事実。だが、得失点差を見ればマイナスで、結果的にもtier1の国々の後塵を拝し、決勝トーナメント進出を逃す。

その時々の局面では”見せ場”を作るが、終わってみれば「健闘」止まり。”頑張ったけど惜しかったね”で語られるのが日本の無難な立ち位置だと、ずっと思ってきた。

それが、アイルランドを倒し、スコットランドまで葬り去って、一次リーグ全勝。「グループ1位で決勝トーナメント進出」と来たものだから、落ち着かないのなんの・・・。

いかにホスト国だといっても、いくら今の日本代表が「勝つ」ことを絶対的な目標に鍛え上げられてきた選手たちの集団だからといっても、こんなことがあって本当に良いものなのかどうか。ここ数号のNumber誌が、本来なら表紙を飾るべき他の競技の主役たちを押しのけて”ラグビー一色(というか表紙だけ見れば福岡選手一色)”になっている(さらに今週は臨時増刊号まで出すらしい)こととも合わせ、メディアがやれベスト8だ、もしかしたらベスト4まで行けるかも!と騒げば騒ぐほど、別世界に迷い込んだような気分になる。

そして、ちょうど1か月前の開幕戦、対ロシア戦から始まった過熱ぶりは、奇しくも試合日が日本ラグビー界のレジェンド・平尾誠二氏の命日と重なる、というできすぎたストーリーの下、今日の準々決勝でまさにピークを迎えたはずだったのだが・・・。

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「所有」がリスクになる時代

台風19号は日曜日の昼には温帯低気圧になって消えたが、残した爪痕は日を追うごとに大きく伝えられるようになってきている。

特に堤防が決壊し、広範囲にわたって水に浸かってしまっているエリアは、地元の人間でさえ今日くらいからようやくおそるおそる家に戻れるようになった、というような状況のようだから、死者・負傷者の総数も含め、被害の全容を把握できるまでにはまだまだ時間がかかるだろう。

今回、自分にとって特別だった地域が、もっとも被害が大きかった場所の一つとして取り上げられているのは何とも苦しいことで、飛んでいきたいのはやまやま、でも行ったところで役に立てることもなさそうだ、ということで、「3・11」の時とはまた次元が異なる悶々とした思いを抱えながら、ここ数日過ごしている。

そして、事前に想定されていたよりは小さめの被害で収まった感のある首都圏でも、人気のあった住宅街で浸水被害が発生する、というニュースが連日流れている。

衝撃から数日経ったこともあって、今日くらいからは「そうはいってもハザードマップで想定されていたとおりじゃないか、ちゃんと備えをしていない方が悪い。」といった論調の記事等もチラホラ出ているようだし、当事者ではない”外野”からの意見としては、それもまさに正論、ということになるのだろう。

ただ、実際にその場に土地なり建物なりを所有して居住している人々にしてみれば、いかに「ハザードマップ」等で自分の居住エリアのリスクが高いと判定されたとしても、リスクが顕在化する一歩手前まではそこに留まりたいと思うのは当然のことだし、ましてや、土地建物を手放して安全なところに移住する、という選択肢など、そう簡単に取れるはずもない。

長年そこに居住して、堅固な生活圏を築いている人々にとって「移住」は人生の一部の喪失に他ならないし、逆にここ数年で不動産を購入した人にとっては、「移住」は人生の破綻(特にローンの支払いに追われている人にとっては・・・)につながりかねないリスクをはらむ。

万に一つのリスクが顕在化し、現実に土地や建物に大きな被害が出てしまった以上、考えを改めて動き出す人もボチボチ出てくるだろう。

それでも、「次に同じような災害がいつ来るのか、また来るかどうかすらわからない」という発想の下、住んでいた場所が一通り復旧したらそのまま住み続けるのが一番、と考えている人は決して少なくないと思われる*1

そう、土地、建物を所有する、ということは、それだけ「重い」ことなのだ。

*1:そもそも、これだけの被害の直撃を受けた以上、居住していた物件を購入時よりも価値を落とさない状況で第三者に売って出ていく、というのは至難の業だから、結局、売りたくてもそのまま不動産を持ち続けざるを得ない、という人は決して少なくはないはずだ。

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雨の悪戯。

台風19号による被害の収束が未だ見えない状況で競馬の話か!という突っ込みはあると思うのだが、売得金の一部は一般財源、しかも多くは畜産振興等の農業予算に充てられる、ということで、特に土曜日から明日までの4日間は、先月から立て続けに災厄を受けている農家の方々への募金も兼ねるつもりでやっている*1

で、こんな時に行われた競馬だから、当然ながら、重賞が行われた日曜日の京都、今日の東京ともに、天候は悪く、馬場も湿っていた。

秋のGⅠウィークの皮切りとなる日曜日の秋華賞は、いつもは大体良い天気の中、開幕したてのパンパンの京都競馬場の芝の上で行われるものだから、切れ味の良い良血馬、特にここ数年はディープインパクト産駒の独壇場のようになっていたのだが*2、天候が悪化して馬場が湿った数少ないレースでは、一転してディープインパクト産駒が来ない、というデータもある。

1番人気馬(アエロリット)とともに2番人気だったファンディーナも飛び、ハービンジャー産駒2頭(ディアドラ優勝、モズカッチャン3着)とハーツクライ産駒(リスグラシュー)が上位を独占した2年前のレースや、ジャングルポケット産駒のアヴェンチュラが好タイムで制する中、桜花賞馬・マルセリーナがあえなく散った2011年のレースがそのサンプル。

そして、今年も1番人気・ダノンファンタジーを筆頭に、2番人気・カレンブーケドール、5番人気・コントラチェック、さらには7番人気に留まっているもののデビューから3連勝で不思議な存在感を発揮していたサトノダムゼル、といったディープインパクト産駒たちに注目が集まる中で、「雨」の影響がどう出るか、ということが、個人的には最大の関心事だった。

結果的には、いかにも重い馬場に強そうなバゴ産駒のクロノジェネシスが、桜花賞オークスともに3着というじりっぽさをパワーで克服して優勝。そしてこれまた雨に強いダイワメジャー産駒のシゲルピンクダイヤ(桜花賞2着)が10番人気で3着に飛び込み、一方でダノンファンタジーは伸びきれずに8着*3、という概ねデータ通りの結末に。

ただ、その一方で、オークス2着のカレンブーケドールが空気を読まずに2着に飛び込んだことで*4、中途半端に予想を外してしまったのは自分だけではないはずだ。

翌日の府中牝馬S(東京芝1800mだから本来ならディープインパクト産駒の独壇場)でも、1番人気のプリモシーンが飛び*5ヴィクトワールピサメイショウサムソンオルフェーヴルという馬場悪化を苦にしない血統を持つ馬たちが勝つ、という展開になったから、「雨の日にディープ産駒を買うな」という格言は依然として生きている、ということなのだと思うのだけれど・・・。

*1:そのためなのか、日曜日以降、馬券はかすりもせず、ただただJRAに上納金を収めるだけ、という展開になっているが、それもまたよし、である。

*2:昨年はアーモンドアイ(ロードカナロア産駒)という怪物にタイトルこそさらわれたが、2着、3着は順当にディープインパクト産駒が占めていた。

*3:最後の直線で不利を受けた影響が大きかったにしても、いつもの切れ味を発揮できなかったのもまた事実だと思う。

*4:米国血脈を引き継ぐチリ産の母馬が、道悪対応力を多少なりとも補強してくれたのか、それともいち早く天候が回復傾向に向かった関西での開催だったから「稍重」でも多少馬場状態は良くなっていたのか、純粋にこの馬が強いのか、真相は闇の中である・・・。

*5:久々の出走で馬体重が大幅に増えていた影響もあるのだろうが、最下位15着という大惨敗だった。

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