有害サイト削除法案?

年が変わり、政権奪取に向けてより攻勢を強めている民主党の周辺から、驚くべきニュースが出てきている。

民主党は18歳未満の若年者が犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、インターネット上の違法・有害サイトの削除をプロバイダーなどに義務づける法案の国会提出に向け、党内調整を始めた。自殺勧誘や、児童買春の温床とされる出会い系や児童ポルノなどに簡単にアクセスできないようにする狙い。」(日本経済新聞2008年1月4日付朝刊・第2面)

他の法案では自民・公明とガリガリ競り合っている野党第一党が、「与党との共同提出も視野」というのだから、それだけで相当な話なのだが、サイト開設者やプロバイダーに「違法情報を発見し次第、削除しなければならない」という義務を課した上に、

違法かどうか明確でなくても、有害な恐れがある場合は児童が閲覧できなくなるような措置を講じるよう義務付ける。罰則を設けることも視野に入れる」

というのだから、ことは穏やかではない。


さらに、「有害情報」の定義として、(1)著しく性的感情を刺激する、(2)著しく残虐性を助長する、という元々曖昧さが指摘される主観的表現を引っ張り出してきた上に、「個人を著しく中傷する情報の規制」も検討するというのだから、一体どこまで規制されることになるのか、その外延を見極めるのはきわめて困難な作業となろう。



そもそも、このような立法を検討するにあたって、「インターネット上の違法・有害サイト」がどの程度若年者に深刻な影響を与えているか、という点について、どの程度の実証的なデータが用意されているのだろうか?


中高生(時には小学生も)が携帯サイト等を通じて、そういったサイトの存在を知っている、あるいは利用したことがある、というデータは出てきているものの、そういったサイトを利用している者がみな犯罪に巻き込まれているか、といえば、そんなわけはないのであって、そういった認識が人々の間に生まれているのだとしたら、それは、ある種の印象操作、すなわち、「一部のレアな事例がメディアで殊更に大きく報道されることによってもたらされた」“誤解”によるところが大きい。


また、仮に多くの中高生が違法・有害サイトによって、深刻な被害を受けているのだとしても、それを是正する手段として認められるのは、せいぜいフィルタによる閲覧制限くらいで、プロバイダーによる「違法情報」の一律削除を義務づけるのは、明らかに過剰な規制と言わざるを得ない。


過度に広範な制約を課すことによって、表現者の側でも、表現の場を提供する側でも、疑心暗鬼に陥ってしまい、表現ツールないしコミュニケーションツールとしてのインターネットの意義が著しく損なわれる可能性が出てくることを完全に否定するのは難しいように思われる。


おそらく、今回の記事は、民主党周辺の人々が世論の反応を探るために打ち上げた観測気球に過ぎないのであろう。


だが、頭の固い自民党議員が、地域の老人会やPTAの会合で人気取りのために唱えるような施策が、「民主党の」施策として出てきてしまうこと自体に、筆者としては失望を禁じえないのである・・・。

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