最近、映画館にめっきり足を運ばなくなって久しかったのだが、オールドファンとしてはさすがに見逃すわけにはいかないだろう、ということで、「踊る大捜査線」のFINALを見に行ってきた。
以前、どこかで触れたことがあるかもしれないが、自分は、このシリーズが本当の意味で「見るに値した」のは、ドラマシリーズの時までで、それ以降に世に出された特番やら、MOVIEシリーズやらについては、「純粋なドラマ系エンターテインメント作品」としては、残念ながら高い評価は到底付けられないだろう、と思っている*1。
取り上げられる事件の筋にイマイチ迫真性がなく、解決に向けての“落としどころ”にも共感できない、そして、描かれている人物像の輪郭も何となくぼやけている・・・*2。
もちろん、あのドラマを、本放送、再放送、DVD*3と何度も繰り返し見ていた人間にとっては、やたら細かいところまで凝っているセットの遊び心だったり、シリーズをまたがって張られている伏線*4といったものを味わう楽しみはあるのだけれど、結局それだけで、第2弾のMOVIEやそのスピンオフ作品が驚異的な興行収入を挙げれば挙げるほど、作品自体の評価が下がる、という悪循環。
新しい役者を揃え、満を持して送り出した第3弾が思いのほかコケた時点で、2年後の打ち切りはほぼ見えていた、といっても過言ではない状況ではあった*5。
それでも自分が、あえて映画館に足を運んだのは、あのドラマの中の、ちょっとした仕掛け(気の利いたセリフやらシーンやら)の一つひとつが、当時の自分にとっては、すごく大きく響いて、印象に残るものだったから。
そして、ちょうど自分自身の人生の転換期に重なっていたあの頃から15年経った、という重さを、大きなスクリーンに出てくる、当時からの登場人物の姿を見ながら感じたかったから、ということに尽きるのかもしれない。
別に、当時から、あのドラマを見たから、といって、「警察官になろうか」と思うほど自分は単純な人間ではなかったし*6、あそこに描かれていた「正しいことをしたければ偉くなれ」的な世界観に共感するつもりも毛頭なかったのだけれど、警察以外の組織に置換すれば、何となくありそうな“リアリティ”が、当時、世の中に出ることに迷いがあった自分の背中を押してくれたのも事実なわけで・・・。
あれから15年。
「青島刑事」が相応の歳をとって、役職に就いているのと同じように、自分を取り巻く環境も、大きく変わるには十分過ぎるほどの時間が流れたのだなぁ・・・ということを感じざるを得ない日常の中、ドラマの中の刑事のようにリミットを超えて走り回るわけにもいかない今の環境に、フラストレーションは溜まる一方。
だから、スクリーンの中のキャラクターを見たところで、“懐メロ”以上の感慨を抱くことはないだろう、と思っていたのだけれど、今回の作品は、ストーリーがぶっ飛び過ぎていて*7、そっちに思考を巡らす必要が全くなかった分、かえってスッキリした(笑)。
オープニングのタイトルロールから、ラストのシーンまで、これはきっと、「どうせこれで終わりなんだから*8、原点に戻って走り回れ!」っていうメッセージなんだ、と(制作サイドの意図など構わず)勝手に解釈して、まぁ、やるしかないんだろう、と*9。
幕が落ちたって、ひとつのシリーズが終わるだけで、そこから先は、また新しいシリーズが始まる・・・
たとえ根っこにあるのがやけっぱちだとしても、そんな気持ちで過ごすことが最高の良薬なのだ、と今は信じている*10。
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*1:強いて言えば、MOVIEの第1弾までは、何とか「全く『踊る』への郷愁がない人にも勧められる」レベルだったというべきだろうか。あれも、見た当時は「うーん???」という印象の方が強かったのだけど。
*2:特に、室井こと柳葉敏郎を「現場に理解があるいい人」というキャラクターに固定してしまったのが、ドラマ以降の「踊る」シリーズを薄っぺらいものにしてしまった最大の原因だと思う。ドラマシリーズでは随所に見られた、「理解はするが一線は譲れない」が故の緊張感が、MOVIE以降は完全に失われてしまった。個人的には、組織の一員としての嫌な一面を見せつつも、ところどころで人間味を忘れていない新城管理官(筧利夫)だの一倉管理官(小木茂光)だのの方が、よっぽど共感できるキャラだった。
*3:・・・というか、当時はVHSを擦り切れるくらいの勢いで見てたけど・・。
*4:もっとも、ドラマが終わって以降は、先々のシリーズまで伏線を張っている、というより、アドリブに合わせて無理やり設定を作った、というパターンの方が多くなってしまって、ドラマの時の巧妙な仕掛けとは全く別物になってしまっているのだが、それでも、オールドファンには嬉しい&優しい仕掛けだった。
*5:いかにドラマとはいえ、どんなに時間が流れても、同じ署内で同じメンバー構成・・・というのは、さすがに無理があるわけで、そこでキャストを入れ替えたのに反応がイマイチだった、という事実は、制作サイドにシリーズ打ち切りを決断させるには十分過ぎる動機になっただろうと思う。個人的には、15年近く経って“脇役”が違和感なくできるようになった内田有紀の配役などは、最高にはまっていたと思うから(歳月を感じさせる熟成した演技の落ち着きと歳月を感じさせないキュートさが、役のポジション的にはバッチリ、だった)、他の新しいキャスト陣と合わせて、もう少し見てみたかったなぁ・・・という思いもあったのだけど。
*6:余談だが、「踊る」を見て警察官なり警察官僚なりを目指した、という人間を、自分は複数知っている(笑)。さらに余談だが、「検察官志望」を前面に出していた人間の中には「HERO」を見て憧れたとかなんとか言ってた人間が結構いた(爆)。
*7:というか、あれは“インスパイア”以外の何物でもない、と思った。いっそのこと、小栗旬の役を堺雅人あたりにすり替えて、深津絵里に猫のTシャツでも着せた方がよかったのではないかなぁ・・・(苦笑)。“インスパイア”はこのシリーズの常套手段、かつエンタメ性を高めている重要な要素とはいえ(そもそも始まりは『セブン』だからw)、今回はいつもにまして、オリジナリティを無視した“やり過ぎ感”が強かったような気がする。
*8:まぁ、最後の最後まで行ってもあの展開、というところを見ると、製作側もまだシリーズ継続に未練を残しているのかなぁ、と思わざるを得なかったのだが、そこは目をつむるということで。
*9:青島刑事に限らず、どのキャラクターにも好き勝手やらせてたなぁ、というのが、「FINAL」のストーリーに対する数少ない感想である。初回登場の時とは全然違うキャラになって終わってしまった人もいたけれどwww
*10:なお、エンドロールを見て、「中西係長」(恩田刑事の上司役)として長くこのシリーズで活躍されてきた小林すすむ氏が逝去されていたことを知った。クランクアップ直後に急逝された、ということで、長年テレビで、スクリーンで、この方の演技を見てきた者としては、何とも言葉にできないものがある。ご冥福を心よりお祈り申し上げたい。