前線に立ち続ける者の気概と苦悩。

「ドラマがつまらん」と言われるようになって久しい今日この頃だが、CX系で実に7年ぶりに「コード・ブルー」が帰ってきた、ということで、前宣に煽られつつ、珍しく初回からかぶりついてしまった。

コード・ブルー 〜 the third season』(http://www.fujitv.co.jp/codeblue/

映画でもドラマでも、1stシリーズよりも2ndシリーズの方が面白かった作品は、大概「名作」と言って差し支えないのであるが、この作品の場合、1stが2008年の夏、2ndが2010年の初め、と、自分自身の転換期に重なったこともあって、より自分の思い入れは強い*1

「所詮は人気俳優をまぶして、ご都合主義でストーリーが出来上がっているだけのドラマ」といってしまえばそれまでだし、専門外のフィールドの話でディテールを気にしなくてよいからこそ楽しめているのも事実*2

ただ、医療の現場、中でも特に救急救命の現場、って、ドラマの中で脚色されればされるほど、自分の今の仕事の日常に近づいてくる不思議さがあって、どうしても他人事とは思えずにす入り込んでしまうところはある。

昼間、一日中ほぼ鳴りやまない電話、打ち返しても打ち返しても新しい照会とセットで戻ってくるメール。
朝から立て続けに重たい打合せ(ある種、オペみたいなものだ)をセッティングされて疲労困憊になっている中、夕方に電話が鳴ってスケジュールが空いていようものなら、「○分後に行きます」の一言で、打合せと大量のレビュー作業を強いられる。そして、ほとんどの場合対応期限は翌朝。

ヘリに乗ることはないが、何かあれば、エコノミークラスの狭い座席に閉じ込められて、深夜便で数時間のフライトを余儀なくされることもあるし、そこまで手を尽くしても、ちょっと状況が好転すると、心変わりした患者(依頼部署)は病棟(法務)を離れ、しばらくして戻ってきた時にはより状況が・・・などということも稀ではない。

(少々脚色はしたものの)雰囲気としては、ざっとこんなものだ。

目の前で血が流れることはない代わりに、一つ判断を間違えれば大きなプロジェクトが飛び、下手をすると会社の部門ごと息の根を止められることになりかねないような緊迫感の中で、次から次へと入ってくる仕事を捌く、というのが、企業法務の「臨床」の現場であり、自分が長年ベースにしてきたところでもある。

「予防法務」とか「戦略法務」とかいう言葉が流行った時期もあったし、自分自身そちらに力を入れていたときもあるのだが、やってみてわかったことは、企業が“生きたビジネス”の中で生きている存在である以上、どれだけ「予防」とか「戦略」とか言ってみたところで、「臨床」の意義とか必要性が失われるものではない、ということ。
そして、法務部門が様々な取り組みを通じて、企業組織の中に食い込めば食い込むほど、営業部門が日々行う契約交渉や顧客対応から派生する「臨床」案件が増える、ということである。

そんな中で、昼も夜もなく仕事をやるようになって久しい身としては、「一話、二話かけて(下手するとシリーズ通じて)一つの事件をじっくり」みたいな、のんびりペースのドラマより、一話の中で様々な事件が次々と起きる救急救命系のドラマのテンポの方がしっくり来るんだよなぁ・・・と、思わずにはいられない。

そして、多くの視聴者が、どことなく優等生で安定感のある白石(新垣結衣)とか、クールな藍沢(山下智久)見たさにチャンネルを合わせている中で、今も昔もエキセントリックな戸田恵梨香一押し、というところに、自分自身のキャラと仕事へのスタンスが如実に現れているような気がして・・・。

前線に立ち続ける者としての気概には、常に苦悩が付きまとう。
現実はドラマのように美しくまとまることは決してなく、視聴者のいない世界では喝采を浴びることも、感動の涙を流されることもほとんどないのだけれど、それでも、ちょっとでも未来に希望が持てるなら、虚構の世界に暫し身を委ねるのも悪くないな、と思うのである*3

*1:2ndの時は、わざわざエントリー1本立てたりもした。zhttp://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20100322/1269268622

*2:逆に、法曹三者が主人公のドラマだと、どんなに評判が良くても、もはや楽しめない思考回路になってしまっている・・・。

*3:提供局が、ドラマ日照りの中でも特に状況深刻な局だけに、“3匹目のどじょう”が滑る可能性は否定できないのだけど・・・。

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