何をそんなに期待しているのか。

何でこうなってるのか・・・と、先週末からずっと首を傾げっぱなしな自分がいる。

東京市場の株価急騰。

そろそろだろう…と思った今日も、依然として市場はヒートアップし、日経平均は瞬間的に30,000円台を超えた*1

理屈を聞けば、まぁそんなもんだろうと思う。

不人気、かつ政策推進機能も決して発揮できていたとは言えない総理が辞任の意向を表明し、「次代のホープ」と思われていた若手(と言っても世の中的には決して若くないが・・・)が一躍有力な次期首相候補に躍り出た。

ここ数か月重石になっていた「オリ・パラ」も何とか会期を終え、そうこうしているうちに一時の新型コロナの波も沈静化に向かい始め、ワクチン接種の実施状況も好転の兆しを見せている。

そんな”何となく明るい兆し”に、ここ数か月停滞していた人々のマネーが飛びついた・・・というのがざっくりとした解説になるだろうか*2

だが、冷静に足元を見ると、そこまで前向きな材料はない。

今月に入って公表された各社の月次の数字を見ても、一年前、新型コロナ禍下で気を吐いていた業種は軒並み息切れ、反動減となり、一年前泣いていた飲食、旅行といった業界はさらに輪をかけて厳しい状況となった。

7月までは製造業が力強く景気をけん引していたからまだ良かったのだが、それもまもなく「コロナ後特需」が一巡するから、秋以降は多くを望むのは難しいだろう。

新型コロナの感染者数は、確かにいつもと同じパターンで、頂上を超えて連日減少の一途ではあるが、今回に関しては「登った山」が高すぎて、安心できるような数字になるにはまだまだ時間がかかりそうな雰囲気。でもそうこうしているうちに、これまで同様、我慢しきれなくなった人々が無謀にも活発に動き出し、しばらく「夏休み」を口実にシャッターを閉めてくれていたあちこちの居酒屋も開き始める、となれば*3、いつ再びリバウンドが起きても不思議ではない。

ついでに言えば、後回しにされていた40代、50代くらいの世代がようやくワクチンを打てるようになったころには、早い時期に接種した医療関係者、高齢者からワクチンの効果が薄れ始めるのは目に見えているから、仮に接種率が60%、70%くらいまで行ったとしても再びの「感染拡大」はまだまだ止まらないだろう。

そんな状況で何を期待するの?というのが、正直なところ。

そして、さらに進んで「新しい政治に期待」とか言った話になると、より訳が分からなくなる。

確かに、これまで長く続いていた、確固たる政策の軸も持たないまま、あちこちから飛んで来る「声の大きな人々」の声に振り回されるだけの”御用聞き政権”に比べれば、誰が自民党の総裁になり、そのまま総理になろうと、「これまでよりは多少マシなんじゃないか」という淡い期待が出てきても不思議ではないだろう。

ただ、目下、最大のトピックになるであろう「新型コロナ対策」に関して言えば、政権を引き継いだところで取りうる選択肢が少ないことに変わりはない。

本来なら、一人ひとりがしっかりリスク判断して行動することで最小限に抑えられる災厄が、それをしない/できない人々がいるがゆえにここまで大きな、長引くものになってしまっている、という現実を踏まえれば、誰がトップに立っても結局は非難を浴びるだけ、という結末になってしまう可能性も高いわけで、結局は、大きく変わるところはないんじゃないかな・・・というのが、率直な感想である。

ということで、瞬間的に沸き上がった東京市場も、おそらく今夜の休み明けの米国市場の崩落をきっかけに、我に返った人々によって一気にしぼんでいく、というのが当面の見立てなのであるが・・・


こと政治の世界の話に関して言えば、個人的には、長く続いた”御用聞き”的な八方美人路線が解消されるのであれば、誰が第一党の総裁&総理になろうが、目くじらを立てる必要はなかろう、と思っている。

それくらい、2012年以来の政権のあちこちへの”擦り寄り”は度を越していたし、その反作用として、産業界全体も、一部の大企業も、政権との距離が不自然なまでに近かった。

いっぱしの企業なら本来「自助」で乗り越えなければならない場面なのに、不自然なまでに過干渉な政府の力を借りて何とかやり過ごそうとする。そんなことを繰り返していれば、自ずから企業の足腰も弱っていく。

国は企業の些事などに目を向けず、本当にエネルギーを割くべき領域にリソースを集中させるべき。そして純粋な私人たるビジネスのプレイヤーは、安易に政策発動に頼ることなく、まず自分たちの力で難局を乗り越える道を探るべき・・・。

看板が変わるといっても同じ政党、しかも大きな選挙を控えた時期であることを考えると、多くを期待することはできないだろうけど、それでも”世の中”との距離感をちょっとでも正常な方向に戻そうとする意欲のある人が「次」のポストについてくれることを、自分は願ってやまない。

*1:最近の日経225は、銘柄構成を組み替えるたびに変なバイアスがより強まっていくような気がして、特定銘柄への依存度も高いから個人的にはあまり信用していないのだが、今日はそれ以上にTOPIXの新高値更新のインパクトの方が大きかった。

*2:もちろん、いつものように上昇のきっかけは、金融緩和縮小まで飲み込んだ米国市場の力強い動きだったような気がするし、国内事情だけで今の証券市場を語ること自体、無理があるのは確かだが、今回の上昇劇に関して言えば、日本だけが突出していた、という一面は少なからずあった。

*3:東京都内が辛うじて「山」を越えることができたのも、お盆前くらいまでは「自粛何するものぞ」と営業を続けていたあちこちの店が、感染の爆発的拡大を目にしてたまらず閉めざるを得なくなったことが大きいと思っていて、たとえ訴訟になってでもそういった店を封じ込める覚悟で規制線を敷かないと、いつまで経ってもこのイタチごっこは終わらない。

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