新時代の幕開けか、それとも時代の仇花か

東京大学法科大学院ローレビュー』の
記念すべき第1号が出たそうだ。
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-lr/index.html


この雑誌の意義は、

法科大学院生の学生による研究成果の公表を主たる目的とする」

初めての雑誌である点(あくまで筆者が知る限りにおいて、であるが)、


そして、論文掲載の可否を決するための予備審査(レビュー)を
はじめとする編集作業全般について、

「あらゆる点において学生主導で企画・運営されている点」

にあると思われる*1


このようなローレビューの編纂が、
海の向こう側で一般的に行われていることはよく知られており、
法科大学院設立にあたっての崇高な精神をかんがみれば、
当然の流れ、と評価する意見の方が強いのかもしれないが、
現在のロー生を取り巻く環境や、多くのロー生の意識をかんがみれば、
同じような取り組みを我が国において始められるほど機は熟してはいない、
という意見も出てくるように思われるところであるし、
そもそも研究機関と法曹養成機関が併存する、
という我が国の多元的法学教育システムの下で、
元々長い歴史を有する既存の各種『紀要』と、
上記のような『ローレビュー』をどのように共存させていくか、
というのも、突き詰めて考えれば、
この先難しい問題となってくるのではないかと思う*2


いつの時代においても、
志の高い学生は、少なからずいるもので、
上記のような試みがなされる契機は
常に残されている、というべきだろうが、
環境と時代状況がそのような“贅沢”を許すかどうか、
見極めにくい現状においては、
このような取り組みに対して、
肯定的にも、否定的にも評価を下しにくい側面があることは否めない。


なお、COE誌も含め、滅多なことでは
値札なしで論文を一般公開することをしないかの大学が(笑)、
Web上で上記第1号を閲覧可能な状態に供している、
というのは、一見すると凄いことのようにも思えるが、
裏返せば、それだけ上記ローレビューが微妙な位置づけに置かれている、
ということの表れではないか、という深読みが働く・・・*3


いずれにせよ、
公開論文を話のタネに日々を綴っている、
しがないブロガーとしては、
より突っ込みどころのあるネタの提供、という観点から、
この雑誌が第2号、第3号と世に出されていくこと、
そして、同様の動きが他の大学にも波及していくことを
願うのみである(笑)*4

*1:以上は、同誌巻頭の東京大学法科大学院ローレビュー編集委員会「編集方針について」における記述に基づく。

*2:東大のような“余裕のある”大学は良いにしても・・・。

*3:自分が文献調査したときの経験では、海の向こうのローレビューだって決して「特別な人」が「特別な論文」を掲載している、という類のものではない、というのが率直な印象だったから、上記ローレビューだって他の紀要と同様に堂々と書店に並べれば良いではないか・・・、と部外者としては思ってしまうのであるが。

*4:なお、某大法学政治学研究科のウェブ担当には、新しい雑誌を紹介する前に、法学協会雑誌と国家学会雑誌の「目次」をさっさとアップすることを切に要望したい(2003年で時計の針が止まっているではないか・・・(爆))。

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