知財

すべて「海賊版」のせいなのか?

先週、日経紙に、「出版、砦のマンガ沈む」という見出しの衝撃的な記事が掲載された。 「出版科学研究所は25日、2017年の出版市場が前年比7%減の1兆3701億円だったと発表した。前年割れは13年連続で市場はピークの半分に縮んだが、関係者を驚かせたのはそ…

「知財」だけでは国は立たぬ〜特許政策15年の失敗〜

記事を見かけてから、少し時間が経ってしまったのだが、やはり一言釘を刺しておきたいところがあったので、ここで取り上げておく。 ターゲットは日経紙法務面の「知財立国は成ったか(上)」という特集(渋谷高弘編集委員担当)である。 「2003年3月に知的財…

「白猫」特許訴訟騒動を見て思うこと。

10日くらいから流れ始めた任天堂のコロプラに対する特許権侵害訴訟提起のニュース。 差止め、損害賠償請求の対象が、ゲーム業界の勢力図を変えた人気スマホゲーム「白猫プロジェクト」ということもあり、ネット上でも大きな盛り上がりを見せた*1。 「コロプ…

今年の法改正を見据えた一冊を忘れるなかれ。

年末恒例の「Business Law Journal」誌の「法務のためのブックガイド」特集。Business Law Journal(ビジネスロージャーナル) 2018年 02 月号 [雑誌]出版社/メーカー: レクシスネクシス発売日: 2017/12/21メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る今…

決して踊らすことなかれ〜日本の特許戦略が向かうべき道

ここ数年、知財業界をザワザワさせてきた「プロパテント・ルネッサンス」*1の動きも、左右両極の激しい水面下の攻防の末、ようやく落ち着きを見せてきた感がある。そんな中、毎度おなじみの一橋大・相澤英孝教授の論稿が『経済教室』に掲載された。 「次世代…

「高品質」神話の果てに。

連休中日に公表する、という王道の広報戦略で、ハレーションをできるだけ小さくしようとした努力もむなしく、燎原の炎のように燃え広がる一途になってしまっている神戸製鋼所の「品質データ改ざん」問題。これまでの断片的なプレス発表や報道だけでは、全容…

制度創設3年目の吉報?

2015年4月に鳴り物入りで始まった「新しい商標」制度だが、これまで度々、本ブログ上でもブーイングを浴びせてきたとおり*1、これまでの特許庁の審査運用は実に不愉快なものだった。今年の3月1日には、申し訳なさそうに、経済産業省が「色彩のみからなる商標…

本当に何かが違うのか?

最近、関心を惹かれるような記事が少なくなったなぁ、という印象も受ける日経紙の月曜法務面だが、7日付の特集は「VRとAR ルールは過渡期 」という見出しで、サブタイトルに「ポケモンGO」が入っていたこともあり、何となく読んでしまった。おおざっぱに…

悪意ある商標出願との終わりなき戦い

商標の世界で、「一部の出願人」が異常な数の、しかも、明らかに「他人の商品・サービス名」に便乗した迷惑この上ない出願を印紙代も払わずに行っている、ということが知られるようになって久しい。 あまりに露骨で有名になってしまったゆえに、最近では検索…

「店舗外観」をめぐる紛争に新たな一ページが開かれるのか?

年の暮れも押し迫った時期になって、「コメダ珈琲店の店舗外観が不正競争防止法で保護される」という強烈なインパクトのあるニュースが飛び込んできた。 27日に株式会社コメダホールディングスがプレスリリースを公表し(http://www.komeda.co.jp/pdf/info20…

「知的財産推進計画2016」を真面目に読み解こうとしたジュリストの特集企画より。

最近、ジュリスト誌で年2回特集企画が組まれることも珍しくなくなったのが知的財産法分野。 特集が定番化した頃は、年1回でもちょっとした感動を覚えながらページを開いていたことを考えると、随分贅沢な時代になったものだなぁ、と感慨深いのだが、それは…

「職務発明制度」がどうなったのかを知るために欠かせない一冊。

このブログでも過去何度も取り上げてきた特許法35条の改正に関し、非常に良い解説書だな、と思って紹介するタイミングを見計らっていた一冊の本がある。おそらく、BLJ誌にronnor氏が連載している書評で取り上げられるのではないか、と思い、その反応を見てコ…

いつか見たような騒動〜「ポケモンGO」に思うこと。

先週末に「ポケモンGO」が日本でリリースされて以降、やれ交通違反で検挙されただの、どこそこの施設管理者が申入れをしただの、挙句の果てには期待を過ぎた関連銘柄が暴落して個人投資家が翻弄されているだの、と、このゲームにまつわる話題を聞かない日は…

危険な誤報。

昨年大筋合意に辿り着き、先日は、とうとう署名にまでこぎつけた環太平洋経済連携協定(TPP)。分野によっては、今後、国内法制化に向けて更なる摩擦を生みそうなものもあるのだが、懸念されていた知財関係条項に関しては、昨年までの議論を通じて、大きなイ…

紛争収拾に向けたシナリオ

昨年末に勃発した新国立競技場のデザインをめぐる著作権トラブルが、やはり、本格的に紛争に発展しそうな気配である*1。 「2020年東京五輪で使う新国立競技場の旧計画のデザインを担ったザハ・ハディド氏の建築事務所は14日、事業主体の日本スポーツ振興セン…

知的財産法制のこれから、を占う新春の特集。

昨年末に発売されたジュリストの2016年1月号。 この3連休のタイミングで、「知的財産法制の動向と課題」という特集にようやく目を通すことができた。ジュリスト 2016年 01 月号 [雑誌]出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2015/12/25メディア: 雑誌この商品を含…

「エンブレム」の次は「建築」か? 〜 止まらない東京五輪著作権紛争

今年の著作権関係の最大の話題、と言えば、「五輪エンブレム」をめぐる一連の騒動だろう*1。社内の研修等でしばらく使いまわせる素材が見つかった、という点で、法務・知財畑の人間としてはありがたい話だったのかもしれないが、東京五輪の成功に向けて地道…

「NexTone」は音楽著作権の世界を変えられるのか?

JASRACによる放送局向けの包括許諾契約に独禁法違反、との判断が下ったのは今年の4月のこと。 今年の秋には、JASRACの独占に風穴を開けるべくエイベックスが動き出した、というニュースも報じられていた*1。そして、その続報ともいうべき記事が、この年末に…

早くも手のひら返し?〜混迷深める「新しいタイプの商標」

改正商標法施行前後は、“画期的な新制度”の如く、喧伝されていた「新しいタイプの商標」。そのかいもあってか、蓋を開けてみれば、特許庁ですらおそらく想像していなかったであろう大量の出願が殺到することになった*1。しかし、比較的識別力を認めやすい「…

特許権の制限は国益に反するのか?

漂流目前だったTPPがギリギリのところで“大筋合意”にこぎつけてしまったことで、政治情勢は輪をかけて不穏な方向に向かっているような気がするし、実務の世界でも余計な仕事が増えて嘆いている人は結構多いように思われるのだが、その一方で、日経紙を筆頭に…

特許法「新・35条」をめぐる評価の食い違いをどう見るか。〜 L&T誌の座談会より

本年、知財業界における大きなトピックの一つになっていたのが、職務発明をめぐる特許法の改正である。経産省の力こぶが入っていたこともあり、タイトな審議日程の中で法改正こそ無事なされたものの、その“読み方”については、様々な意見があるところだし、…

いまだ見えない「新しいタイプの商標」の行方。

今年の4月に制度導入されてから、はや10日の間に、欧米の長い歴史に肉薄するような出願数を記録してしまい、多くの企業実務者に衝撃を与えた「新しいタイプの商標」*1。あれから半年が経ち、特許庁は満を持して、「新しいタイプの商標について初めての審査結…

もって他山の石とせよ〜著作権利用許諾をめぐる落とし穴

最近、これは面白い、と感じる大阪地裁発の判決が多いのだが、その極め付けのような判決が最高裁のHPにアップされた。「観光案内用のピクトグラム」の利用許諾をめぐるデザイナーと自治体の間の紛争なのだが、ありがちな契約に基づくありがちな利用場面で…

「独占」が崩れた後に残るもの

著作権等管理事業法が制定されてから15年。 音楽著作権管理の世界に、ようやく大きな地殻変動がもたらされつつある。 「音楽最大手の一角、エイベックス・グループ・ホールディングスが同協会に任せていた約10万曲の管理を系列会社に移す手続きを始めた。JAS…

「TPP大筋合意」は著作権法をどう変えるのか?

“漂流”の可能性も取りざたされる中で、何とか「大筋合意」まで辿り着いた環太平洋経済連携協定(TPP)。 そして、これまでベールに包まれていた協定の内容が、徐々に報道でも取り上げられるようになってきている。関税の引き下げが話題になった翌日、一部の…

3年越しの決着の報に接して考えたこと。

2012年、国内では過去最大級の営業秘密侵害訴訟が提起された、ということで一躍注目を集めた新日鉄対ポスコの事件が、長い歳月を経てとうとう決着を見た、ということが、日経紙の1面で大々的に報じられた。 「新日鉄住金は30日、韓国鉄鋼大手ポスコなどを相…

「キャッチフレーズ」の商標審査基準をめぐるささやかな動き。

時々、商標関係の記事がポン、と載る日経新聞に、「キャッチフレーズ」の商標登録に関する記事が掲載された。 「特許庁は2016年4月にも、企業が商品の販売促進のために使うキャッチフレーズを商標登録しやすくする。審査段階で認める類型を増やし、登録まで…

後味の悪い結末〜遅すぎた五輪エンブレムの“撤回”

ベルギー在住のデザイナーが発した『驚くほど似ている』という一言から、日本中を騒がす大事件になってしまった「東京五輪エンブレム」問題。この話題が沸騰し始めた頃に、「著作権侵害かどうか、という議論だけで進んでいくとこじれるんじゃないかなぁ・・…

再び断罪された職務発明規程の運用〜野村證券職務発明事件高裁判決

何となく“夏休み”的な気分が抜けないまま、ぼんやりと最近アップされた判決をチェックしていたら、野村證券職務発明事件の控訴審判決が先週アップされていたことに気が付いて、ちょっと慌ててしまった。この事件の一審判決が出たのは、ちょうど特許法改正に…

一線を越えずに済んだことへの安堵感。

強制捜査や、被疑者の検察官送致(書類送検)等、事件発覚後のドラスチックな展開のインパクトが相当強かったこともあり、著作権業界では長らく話題が絶えることがなかった「ハイスコアガール」。刑事処分については事柄的に不起訴も十分予想されたものの、…

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